先日、建設業を営む社長からこんな相談を受けました。「役員報酬を下げれば節税できるのはわかってる。でも手取りが減るのは困る。何かいい方法はないか?」
この「手取りは減らしたくないけど税金は下げたい」というジレンマ、多くの社長が抱えているものです。そしてその社長が選んだ答えが、法人名義で築古物件を購入することでした。役員報酬をまったく変えないまま、法人の税負担を年間300万円近く下げることに成功しています。
現金が出ていかないのに経費が増える、減価償却の構造
節税の基本は「経費を増やすこと」です。ただ普通の経費は、増やすだけお金を使わなければならない。交際費を増やすなら飲食代がかかり、設備投資すれば機械代がかかります。
ところが不動産の減価償却は少し違います。一度物件を買ってしまえば、その後は現金の支出なしに、毎年一定額を経費として計上し続けられます。現金は出ていかないのに、帳簿上は経費が積み上がっていく。つまり課税所得だけが下がっていくという、他の節税手法ではなかなか実現しにくい構造です。
築古物件は「短期集中」で償却できる
ここで重要なのが「築古物件」という選択です。
建物の減価償却期間(耐用年数)は、新築の木造住宅で22年。しかし中古物件の場合、残存する耐用年数が短くなるため、償却が一気に進みます。
年商2億円のこの社長が購入したのは、3,500万円の築古木造物件でした。残存耐用年数は4年と算定されたため、計算はこうなります。
- 取得価額:3,500万円
- 耐用年数:4年
- 年間償却額:875万円
毎年875万円が経費に計上でき、法人の実効税率が約34%だとすると、年間の節税額は約300万円。4年間トータルで1,200万円近くの節税になります。3,500万円で買った物件から税負担が1,200万円軽くなるイメージです(出口売却時の課税は別途考慮が必要です)。
「でも3,500万円が出ていくのでは?」という疑問
確かに物件の購入代金は出ていきます。ただ、金融機関からの融資を活用すれば、手元の現金を大きく使わずに取得できます。
融資の元本返済は経費にはなりませんが、減価償却費は経費になる。この「ずれ」が節税効果を生みます。また物件そのものが資産として残るため、適切に出口を設計すれば売却益も期待できます。単純な経費とは違い、資産形成と節税を同時に進められるのが不動産の強みです。
逆効果になるケースも知っておく
もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。いくつか注意点があります。
物件の選定が最重要です。減価償却が大きく取れる築古物件は、それだけ修繕リスクも高い。空室が続いたり、想定外の大規模修繕が発生すれば、節税効果どころかキャッシュフローがマイナスになります。
出口戦略を事前に設計する必要もあります。法人が不動産を売却すると、売却益には法人税がかかります。4年間で節税した分が、売却時にまとめて課税されるケースもあるため、「いつ・どのタイミングで・誰に売るか」を購入前から逆算しておくことが不可欠です。
**購入時期(決算期との兼ね合い)**も見落としがちです。期末ギリギリの取得では、その期の節税効果が薄れる場合があります。物件探しと融資審査には数か月かかることも多いため、決算の半年以上前から動き始めるのが理想です。
「役員報酬は変えたくない」という社長へ
節税を考えると、どうしても「役員報酬を下げる」案が浮かびます。確かに税負担は下がります。でも手取りも下がり、社会保険料の計算も変わり、家族の生活設計にも影響が出る。
その点、法人不動産の減価償却は役員報酬に一切手を触れません。会社の収益構造を変えながら、個人の生活水準は維持できる。これが多くの社長に支持される理由です。
「今期、利益が出すぎている」と感じているなら、来期以降の対策として法人での不動産取得を早めに検討してみてください。物件探しと審査には時間がかかります。気づいたら「今期は間に合わなかった」とならないよう、動き出すのは早いほど有利です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。