先日、自動車部品の卸売業を経営する社長からこんな相談を受けました。「数年前に税理士から勧められてマンションを購入して法人に移したんですが、最近ニュースで不動産節税が通用しなくなったって聞いて……うちは大丈夫ですか?」

この社長、結果的にはほぼセーフなケースでした。でも、似たような状況で「アウト」の可能性が高かった方も何人か知っています。判断を分けるのは、ほんの少しの違いです。

2024年1月、ルールが静かに変わった

国税庁は2024年1月1日以降に相続・贈与が発生する案件から、区分マンションの相続税評価方法を大幅に見直しました。

以前は固定資産税評価額をベースにした路線価評価が基本で、市場価格の30〜40%程度の評価額が認められるケースもありました。これがいわゆる「マンション節税」の根拠でした。

改正後は「時価と評価額の乖離が大きい物件は評価額を引き上げる」という仕組みが導入されました。都心部の高層マンションや新築・築浅物件は特に影響が大きく、場合によっては評価額が1.5〜2倍以上になるケースもあります。「昔聞いた節税効果がそのまま使える」という前提は、2024年以降は成り立たなくなっています。

調査の目は相続税だけにとどまらない

「うちは相続対策じゃないから関係ない」と思った方、少し待ってください。

法人が不動産を使った節税を行っている場合、税務当局が特に確認するのは3点です。法人への不動産移転時の適正価格、個人から法人への地代・家賃の設定金額、そして役員が自社物件に住んでいる場合の家賃計算です。

これらはすべて「時価と著しく乖離している」と判断されると否認されます。特に地代・家賃は「経済合理性があるか」という目線で厳しく審査されており、明確な根拠のない設定金額はそのままリスクになります。

否認されると、いくら取られるのか

税務調査で指摘を受けた場合、追徴税額に加えて加算税がかかります。過少申告の場合は本税の10〜15%が上乗せされます。これだけでもかなり痛いのですが、問題はその先です。

「仮装・隠蔽」と判定されたときは、重加算税として35%が課されます。追徴税額が1,000万円であれば、それだけで350万円が余分にかかる計算です。さらに延滞税も発生するため、発覚が遅くなるほど負担は増え続けます。「知らなかった」は通用しません。

旧スキームはリスクの塊になっている

2015〜2020年ごろに組んだスキームを今もそのまま使い続けている法人は要注意です。

当時は合法で、多くの税理士が推奨していた手法も、その後の法改正・通達変更・判例の積み重ねによって「現在は否認リスクが高い」ものに変わっているケースがあります。法律の文言が変わっていなくても、税務当局の解釈や実務運用の変化によってグレーゾーンがブラックに変わることがあるのです。

定期的な見直しこそが、節税と脱税の間に明確な線を引く基本になります。

今すぐ確認すべき3つのポイント

「うちは大丈夫かな」と少しでも感じた方は、担当税理士に以下を確認してみてください。

まず、現在使っている不動産節税スキームが2024年改正後も有効かどうか。次に、地代・家賃の金額が現在の市場価格に対して適正と言える根拠があるかどうか。そして、法人への不動産移転時の評価額が当時と現在で大きく乖離していないかどうかです。

この3点を確認するだけで、調査リスクをかなり絞り込むことができます。

何年も同じ税理士に任せっきりで一度も見直していないなら、今期中に一度棚卸しをすることを強くおすすめします。スキームを変えるにしても現状維持にしても、まず「自分の状況がどちらに近いか」を把握することが先決です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。