先日、複数棟のビルを持つ法人オーナーの社長がこんなことを言っていました。「固定資産税って役所が決めるものだから、間違いようがないでしょ?」

その一言が、年間数百万円を見逃し続ける原因になっていることは、本人は気づいていませんでした。

固定資産税の評価額、本当に正しいですか?

固定資産税は市区町村が建物・土地の評価額を算定し、それをもとに課税します。でも、この評価額の計算に誤りが含まれていることは、決して珍しくありません。

建物の構造や用途の誤認、土地の地目や地積のミス、設備の分類誤り——こうした小さなズレが積み重なると、課税額が本来より過大になります。1棟あたりの誤差が数十万円でも、複数物件を抱える法人オーナーなら年間で数百万円規模の過払いになることがあります。

実際に評価内容を精査してみたところ、過去3年分で800万円以上が還付されたというケースも報告されています。「どうせ役所が正しい」という思い込みが、毎年こっそりと利益を削り取っているのです。

知らないと手遅れになる「3ヶ月の壁」

固定資産税の評価額に誤りがあった場合、「固定資産評価審査申出」という手続きで不服を申し立てることができます。過払い分の還付を求められる、数少ない公式ルートです。

ただし、この手続きには厳格な期限があります。毎年5〜6月に届く固定資産税の納税通知書、その交付日から3ヶ月以内が申出の期限です。この期限を過ぎると、原則として申出はできません。評価額に誤りがあったとしても、還付を求める手段が閉ざされてしまいます。

今まさにその通知書が届いているシーズンです。「去年と同じ金額だから」と確認もせず引き出しにしまっていませんか?

修繕費と減価償却の「静かな損失」

固定資産税の問題だけではありません。不動産を持つ法人でよく起きている経費の計上漏れとして、修繕費と減価償却のズレがあります。

屋根の防水工事、外壁塗装、設備の交換工事——これらは「修繕費」として全額その期の経費にできる場合と、「資本的支出」として資産計上・減価償却になる場合があります。判断基準は金額や改良の程度によって変わりますが、本来は修繕費として一括経費にできるものを、誤って資産計上しているケースは実務上かなり多いです。

減価償却も同様で、耐用年数の設定ミスや設備の区分誤りによって、計上できる金額より少なく申告しているケースがあります。本来なら今期に経費として引けた金額が、何年にもわたってじわじわと先送りされているわけです。

固定資産税の過払い、修繕費の計上漏れ、減価償却の不足。三つが重なると年間500万円規模の経費機会損失になることも珍しくありません。実効税率30〜35%で換算すれば、毎年150〜175万円の税負担を余計に払っている計算になります。

今すぐ動くための3つの確認

何から手をつければいいかわからない、という方のために、実務上まず確認すべきポイントを整理します。

① 課税明細書で評価額の根拠を確認する 納税通知書には課税額しか記載されていません。評価額の計算根拠は「課税明細書」や市区町村の「評価証明書」で確認できます。土地の地積や建物の床面積・構造が実態と一致しているかをチェックすることが第一歩です。

② 過去3年分の修繕工事を洗い出す 請負契約書や領収書をもとに、資産計上になっているものの中に修繕費として処理できるものがないか見直します。特に100万円以上の工事は要確認です。

③ すぐに税理士へ相談する 評価額の誤りが疑われる場合、あるいは「よくわからない」という場合は、迷わず今日中に税理士に相談してください。3ヶ月の期限は思っている以上に早く来ます。

「知らなかった」では取り返せない

税務の世界では、申告漏れは税務署が指摘してくれます。でも、経費の取りこぼしは誰も教えてくれません。自分で気づいて、自分で動かないと、機会損失はそのまま確定します。

不動産を持つ法人オーナーであれば、5〜6月の固定資産税通知書が届いたタイミングを、毎年の「経費見直しの起点」にする習慣をつけておくことをおすすめします。通知書を受け取ったその日に税理士に一本連絡する——それだけで、毎年数百万円規模の経費機会を守れる可能性があります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。