先日、顧問先の社長からこんな質問を受けました。「役員報酬って、下げると何かメリットがあるんですか?」その社長は月100万円の役員報酬を受け取っていて、ざっくりと年収1,200万円。一見、安定しているように見えますが、その裏側では想像以上のコストが静かに積み上がっています。

そのコストとは、社会保険料です。

月100万円の役員報酬にかかる社保は「年280万円超」

社会保険料(健康保険+厚生年金)は、役員報酬の額に連動して決まります。毎月の給与明細から差し引かれる個人負担分だけでなく、会社が同程度を肩代わりしている点を見落としがちです。

月100万円の役員報酬の場合、個人負担と会社負担を合わせると年間の社会保険料は280万円超になります。報酬の約24%が社保として消えていく計算です。「税金だけじゃなくて社保でここまで持っていかれるのか」と、初めて試算を見た社長が青ざめるのも無理はありません。

月20万円まで下げると年72万円に圧縮できる

では、役員報酬を月20万円まで下げたらどうなるか。社会保険料の計算基礎である「標準報酬月額」が下がるため、個人・会社負担の合計は年約72万円まで圧縮できます。

差額を計算すると、年180万円以上の節約です。10年で換算すれば1,800万円超。この数字は誇張ではなく、実際に試算すると多くの社長が驚く水準です。

もちろん「報酬を下げたら生活できない」という声が出るのは当然です。ここで登場するのが、不動産収入という選択肢です。

不動産収入は社会保険料の計算に入らない

法人が不動産を保有していれば、その賃料収入を活用して役員の生活コストをカバーする設計が可能です。たとえば法人所有の物件に役員が住み、役員が支払う家賃を適正な社宅家賃に抑える方法などがあります。

重要なのは、不動産の賃料収入は社会保険料の計算基礎に含まれないという点です。役員報酬を月20万円に下げても、生活水準を維持する仕組みを設計することが可能になります。報酬と収入の「経路」を工夫することで、社保の負担だけを合法的に圧縮できるわけです。

所得税・住民税も同時に下がる「二重節税」

見逃せないのが、所得税・住民税の節税効果です。役員報酬が下がれば個人の課税所得も減ります。年収1,200万円と年収240万円では、適用される所得税率に大きな差がつきます。

社会保険料の削減と所得税・住民税の軽減が同時に起きるため、トータルで年300万円を超える節税効果になるケースも珍しくありません。特に報酬が高めの役員を抱える中小企業にとって、インパクトの大きい設計変更です。

実行前に必ずチェックしたい3つのポイント

闇雲に報酬を下げればよいわけではありません。実行前に確認すべき点があります。

まず、役員報酬は原則として事業年度開始から3ヶ月以内に決定しなければなりません。期中に変更すると損金算入が認められなくなるリスクがあるため、変更のタイミングは慎重に判断する必要があります。

次に、将来の年金受給額への影響です。厚生年金の報酬比例部分は在職中の標準報酬月額をもとに計算されるため、報酬を大幅に下げると将来の年金が減るトレードオフがあります。老後の生活設計と照らし合わせて検討することが大切です。

そして、法人の不動産活用の設計は税務上の適正性が問われる部分です。役員への経済的利益として認定されるリスクもゼロではないため、税理士と丁寧に設計を詰めることが不可欠です。

知っている人だけが得をする節税の典型例

社会保険料は多くの社長が「仕方ないコスト」として受け入れています。でも実際には、報酬設計の工夫次第で年180万円以上の差が生まれます。

まだ役員報酬の最適化を検討したことがなければ、今期の決算が終わる前に一度シミュレーションしてみてください。報酬を変更できるタイミングは限られているので、早めに税理士へ相談するのが得策です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。