「不動産はまだいい、もう少し先で考えよう」
そう思っている社長は、今すぐ読んでください。
ある税理士から聞いた話です。埼玉で建設会社を経営する66歳の社長が、個人名義で持っている収益不動産(評価額2億円超)を、いつか息子さんに引き継ごうと考えていました。でも「まだ早い」「息子もまだ準備できていない」と、5年間先送りにした。
その5年後、相続が発生しました。
試算してみると、5年前の見込みより相続税が3,000万円以上多くかかっていた。
「5年前に始めていれば防げた額でした」
担当税理士がそう言ったとき、ご家族は何も言えなかったといいます。
なぜ「先送り」で税負担が膨らむのか
不動産の相続税評価は、土地については路線価が基準になります。路線価とは国税庁が毎年発表する評価額で、おおむね時価の80%程度に設定されています。
ここで重要なのは、路線価が毎年更新されるという点です。
地価が上がれば路線価も上がる。路線価が上がれば評価額が増える。評価額が増えれば、そこにかかる相続税も増える。2億円規模の不動産だと、評価額が10%上がるだけで課税対象が2,000万円単位で膨らみます。
埼玉の社長のケースも、この5年間で地価が着実に上昇していました。都市部を中心に地価回復・上昇が続いている今、「先送り=税負担が積み上がる」という構図は多くの地域で現実になっています。
「今の評価額」で動けるうちが対策のタイミング
不動産の承継対策でよく使われる手法に、法人への移転や生前贈与があります。どちらも、対策を実行した時点の評価額が基準になります。
つまり、路線価が低いうちに動けば、それだけ有利な条件で引き継ぎができる。逆に先送りすれば、上がった後の評価額で対策することになるため、同じ手法でも効果が薄れます。
「法人移転が必ずトクか」「贈与税との兼ね合いはどうか」は個別の状況によって変わります。ただ「先に動いた方が選択肢が広い」というのは、ほぼ例外なく当てはまる原則です。
こんな社長は特に急いでほしい
次のような状況に心当たりがあれば、対策を急いだほうがいいかもしれません。
- 個人名義で収益不動産を複数持っている
- 後継者は決まっているが、具体的な引き継ぎ計画がまだない
- 不動産のある地域が再開発・人口流入などで地価上昇中
- 自社の決算が近く、役員報酬の見直しと合わせて動きたい
これらが重なるほど、「今すぐ相談」の優先度は上がります。
「相続が発生してから」では遅い
相続が発生した後に使える対策は、限られています。特例の適用条件を満たせなかったり、評価額の圧縮幅が小さくなったりと、生前なら選べた選択肢が消えてしまうことも少なくありません。
「今日動けること」と「相続発生後にできること」の差が、数百万から数千万単位になるケースは珍しくない。埼玉の社長のケースは、その典型でした。
「まだ早い」が一番高くつく
「もう少し落ち着いてから」という感覚はよくわかります。後継者との関係性やタイミングもある。事業承継はデリケートな話です。
でも税金だけで見れば、「早く動くほど有利」はほぼ間違いない。
個人名義の不動産を持っていて、後継者への引き継ぎを漠然と考えているなら、今期中に一度、税理士と試算してみることをおすすめします。「先送りのコスト」が数字になって見えると、動くタイミングの感覚が変わりますよ。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。