先日、ある不動産オーナーの社長から連絡がありました。「税務署から調査通知が届いたんですが、不動産関係で何か問題になりそうなことってありますか?」という一言でした。
話を聞き進めると、3つほど「あ、それは調査官に目をつけられやすい」と感じるポイントが出てきました。
2024年から税制改正が相次いだ不動産節税。知らないまま続けていると、最大5年遡って追徴される可能性があります。今回は、税務調査で特に狙われやすいNGパターンを3つお伝えします。
3位:修繕費の大量計上
建物の修繕費は、適切に処理すれば全額損金算入できる有力な節税手段です。ただし、1件60万円を超えるような大規模工事を一括で損金算入すると、調査で「これは資本的支出だ」と否認されるリスクがあります。
税務上、「修繕費」と「資本的支出」の境界線は、工事の内容と金額によって判断されます。雨漏りを直す工事は修繕費ですが、屋根を全面改修して建物の耐用年数を延ばすような工事は資本的支出として減価償却が必要になります。
調査官はこの区分けを細かく見てきます。複数の工事をまとめて一括計上しているケースや、毎期多額の修繕費が計上されているケースは特に要注意です。「その改装工事の見積書と請求書を見せてください」と言われた瞬間から、ヒヤヒヤが続くことになります。
2位:役員社宅の家賃ゼロ運用
会社名義で借りた物件に役員が住む「役員社宅」は、うまく使えば実質的な節税になります。ただし、会社が賃料を全額負担している場合、その差額が「役員報酬」として認定されてしまいます。
国税庁の通達には、役員が最低限負担すべき「賃料相当額」の計算式が定められています。小規模住宅か豪華社宅かで計算方法は異なりますが、少なくともこの計算式で出た金額を役員が会社に払っていないと、否認リスクが生じます。
「会社が払っているから個人の出費はゼロ」というケースが一番危険です。税務調査で発覚すると、過去数年分が一括で役員報酬に加算され、源泉所得税の徴収漏れとして追徴されます。月額家賃が20万円の物件であれば、3年遡るだけで720万円の指摘になることもあります。
1位:2024年以降もタワマン節税を続ける
そして最も注意が必要なのが、タワーマンションを使った相続税節税スキームをまだ続けているケースです。
2024年1月から「区分所有マンションの評価方法」が改正されました。これまでは路線価や固定資産税評価額ベースで計算すると、時価の20〜30%程度まで評価を下げることができていました。改正後は評価乖離が大きい物件について、時価の60%水準まで補正されるようになっています。
つまり、以前は1億円のタワマンを2,000万円で評価できたものが、6,000万円程度まで引き上げられるケースが出てきています。改正を知らずに旧来の計算で申告してしまうと、過少申告加算税(最大15%)が課される可能性があります。
「2023年に購入したから大丈夫」と思っている方も、相続が発生した時点が2024年以降であれば改正後のルールが適用されます。購入時期ではなく、申告時の評価が問題になる点に注意してください。
3つに共通すること
修繕費・役員社宅・タワマン節税、この3つに共通しているのは「節税効果が大きいほど、調査でも目立つ」という点です。
税務署は節税スキームのパターンを熟知しています。「この会社はこの手法を使っているな」と気づかれると、調査の切り口として真っ先に使われます。節税はもちろん合法的に行うものですが、どの手法も「正しい処理の範囲内で行う」ことが大前提です。
効果だけを追いかけて処理が雑になると、追徴税+過少申告加算税+延滞税のトリプルパンチになりかねません。特に2024年の評価通達改正は影響が大きく、「知らなかった」では済まされないケースも出てきています。
不動産を使った節税をすでに実施している方は、一度税理士と一緒に現状の処理を棚卸ししておくことをおすすめします。思わぬ落とし穴が見つかる前に、早めの確認が肝心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。