先日、役員報酬を2,000万円に設定している製造業の社長から、こんな相談を受けました。「報酬を上げたのに、手取りが全然増えた気がしない」。
税理士に確認してもらったら、手取りは1,200万円だったと言います。その感覚は正直です。役員報酬2,000万円のうち、所得税・住民税・社会保険料を合計すると800万円以上が消えていきます。手取り率は60%にも届かない。給与として受け取るだけでは、どうしても限界があります。
でも、知っている社長は違うアプローチを使っています。「法人×不動産×報酬設計」という3つの組み合わせで、実質的な税負担を大幅に下げているんです。
法人で不動産を取得して減価償却を活かす
一つ目は、法人名義で収益不動産を購入するアプローチです。
不動産には「減価償却」という仕組みがあります。建物の取得価格を耐用年数に応じて毎年費用として計上できるので、会計上の利益を圧縮することができます。たとえば1億円の収益物件(建物部分7,000万円)を法人で購入した場合、耐用年数によっては年間数百万円の減価償却費が計上でき、法人税を大幅に抑えられます。
個人でも不動産を持てますが、個人の所得税は累進課税なので高所得者ほど税率が高くなります。法人税率(中小企業の場合、実効税率25〜30%程度)と比べると、法人を経由した方が節税効率が高いケースが多いのです。
役員社宅で居住費を法人経費にする
二つ目は、役員社宅の活用です。知らない社長が多い、意外な節税手法です。
会社が賃貸物件を借りて、社宅として役員に貸し付ける仕組みです。家賃の大半を法人が負担し、役員本人は「賃貸料相当額」と呼ばれる一定の金額(月数万円程度のこともある)だけを支払えばOKです。差額が法人の経費として落ちます。
たとえば月30万円の家賃のマンションを社宅化した場合、年間360万円の家賃が法人経費になります。個人が自腹で同じマンションに住めば、税引き後のお金で360万円払うことになります。高所得の役員にとっては、年間数十万円単位の実質的な節税効果があります。
社宅規程の整備や賃貸料相当額の計算ルールは税法で定められているので、税理士と相談しながら進めることをおすすめします。
役員報酬を「最適額」に設定し直す
三つ目は、役員報酬額の設計そのものを見直すことです。
社会保険料には「上限」があります。標準報酬月額の上限(現在135万円/月)を超えると、それ以上報酬を上げても保険料は増えません。一方、所得税・住民税は上限がなく、報酬が増えるほど税率も上がります。
このバランスを考えながら、「どの額で受け取るか」「残りは法人に留保して投資に回すか」「配当として受け取るか」を設計するのが報酬の最適化です。役員報酬を月100万円前後に抑えつつ、法人の利益で不動産投資を回すパターンは、よく見られる手法の一つです。
3つを組み合わせると何が起きるか
この3つを組み合わせると、年300〜400万円の節税が現実的になります。場合によっては、実質的な税負担率が半分近くまで下がったケースもあります。
注意点もあります。役員社宅は「豪華社宅」に該当すると計算方法が変わり、節税効果が薄れます。不動産購入も、節税目的だけで動くと収益性の低い物件をつかまされるリスクがあります。あくまで「本業の利益をどう守るか」という視点を軸に置くことが大切です。
設計次第で手取りが大きく変わるのが、役員報酬と不動産の組み合わせの面白いところです。まだ法人名義で不動産を持っていないなら、決算前に一度シミュレーションしてみることをおすすめします。数字を見てから動いても遅くはありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。