先日、年商2億円ほどの製造業の社長からこんな相談を受けました。「法人で事務所ビルを持っているんですが、なんか毎年の税金が高い気がして…」と。決算書を見せていただいたら、びっくりしました。計上できるはずの経費が、7項目中4項目も抜けていたんです。

「税理士さんに全部お願いしているから大丈夫」と思っている社長も多いかもしれませんが、不動産まわりの経費は、情報が顧問税理士に届いていないだけで漏れていることがあります。今すぐ経費の一覧を開いて、確認してみてください。

なぜ法人不動産の経費は見落とされやすいのか

法人の不動産経費に多い特徴が、「払った記憶がない」ものが多いことです。

固定資産税は市区町村から送られてくる納付書で払いますが、「個人の自宅と法人の不動産を一緒に払っている」と混同してしまい、計上が抜けるケースがよくあります。

月々のローン返済も要注意です。毎月同じ金額を払っているように見えますが、その中には「利息部分(経費になる)」と「元本返済部分(経費にならない)」が混在しています。「毎月同じ金額だから全額経費」と思い込んでいたり、逆に「ローンはどうせ経費にならない」と勘違いして利息分まで計上し忘れているケースも少なくありません。

法人不動産で計上できる7つの経費

①固定資産税

毎年1〜4月ごろに届く納付書の金額が全額経費になります。法人専用の物件であれば全額計上できますが、個人と法人で兼用している場合は使用割合で按分が必要です。年間数十万円になることも多く、見落とすと痛い項目のひとつです。

②修繕費

外壁の塗装、エアコンの交換、水回りの修理など、建物の現状維持のための費用は修繕費として全額その年の経費に落とせます。ただし、建物の価値を高める「資本的支出」(エレベーターの新設や大規模リフォームなど)は減価償却が必要になるため、区分の判断が求められます。

③管理費・管理委託料

マンションの管理組合に支払う管理費や、管理会社への委託料は全額経費です。「毎月口座から自動引き落とされているだけ」で経費として意識していない社長が多い項目でもあります。

④ローンの利息部分

不動産購入ローンの返済額のうち、利息部分だけが経費になります。元本返済は経費になりません。金融機関から年間の返済明細が届いているはずなので、年間利息の合計額を確認してみてください。金利が高い時期に組んだローンであれば、年間数十万円になることもあります。

⑤火災保険料・地震保険料

長期一括払いにしている場合は、保険期間で按分して毎年計上します。「数年前に払ったきり忘れていた」という社長が多い項目です。証書の保険期間と金額を確認して、年間按分額を出しておくと毎期スムーズです。

⑥減価償却費

建物(土地は対象外)は毎年一定額を減価償却として経費計上できます。法定耐用年数に応じた計算が必要ですが、「購入時に固定資産台帳に登録して終わり」にしてしまい、毎期の計上処理が漏れているケースが意外と多いです。建物の取得価額が高いほど、減価償却費の金額も大きくなるため、金額インパクトの大きい項目です。

⑦役員社宅の家賃差額

役員が法人所有の不動産に居住している場合、役員から適正家賃の一部(一般的には市場家賃の20〜50%程度)を受け取る形にすれば、差額を法人の経費として計上できます。うまく設計すれば節税効果が大きい半面、設定を誤ると役員報酬として課税されるリスクがあるため、税理士と相談しながら整備するのがおすすめです。

年100万円の計上漏れは、10年で300万円の損失

7項目を合算すると、年間100万円以上の計上漏れになっている法人も珍しくありません。

法人実効税率が約30〜34%だとすると、年間100万円の計上漏れがあれば、払わなくてよかった税金を年30万円超、余分に払い続けていることになります。5年で150万円、10年放置すれば300万円を超えます。

社員一人分の年収に相当する金額が、帳簿の確認だけで変わってくるかもしれません。そう考えると、確認しない理由がないはずです。

今週中にやってほしいこと

チェックの方法はシンプルです。今期の経費一覧を開いて、上記7項目が全部入っているか確認するだけです。

もし抜けているものがあれば、今期中に計上することで取り戻せます。過去の計上漏れについては修正申告という手段もありますが、税務上の時効(原則5年、仮装・隠蔽があれば7年)があるため、早めに動くのがポイントです。

法人で不動産を持っている社長は、ぜひ今週中に顧問税理士に「不動産経費の一覧を見せてほしい」と一言連絡してみてください。一本の電話が、何十万円もの差につながるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。