先日、東京で建設業を営む社長から連絡をいただきました。「会社名義でビルを持っているんですが、税理士から『もっと経費が取れますよ』と言われて。正直、何が経費になるのかよくわかっていなくて……」
確認してみると、固定資産税も管理委託料もしっかり払っているのに、帳簿に計上されていない項目がいくつかありました。年間で約80万円の計上漏れ。実効税率約30%で換算すると、余分に払っていた税金は24万円。「毎年これだけ損していたんですか」と、その社長はしばらく言葉を失っていました。
法人不動産には、これだけの経費が取れる
法人(会社)名義で不動産を保有している場合、以下の7項目がすべて経費として計上できます。
- 減価償却費(建物・附属設備の法定耐用年数に基づく償却)
- 修繕費(維持補修のための工事・部品交換など)
- 固定資産税・都市計画税(毎年届く納税通知書の金額)
- 管理委託料(不動産管理会社に支払う月額費用)
- 借入利息(不動産取得時のローン利息部分)
- 火災保険料・地震保険料(建物に付保した保険の費用)
- 専門家報酬(登記を依頼した司法書士、取引に関わった税理士など)
「全部知ってる」と感じた方も、一度帳簿を見返してみてください。「払ったはずなのに、なぜか計上されていない」という項目が1つ2つ出てくることが意外と多いんです。
なぜ計上漏れが起きるのか
最もよくある原因は、支払いと経理処理が分断されていることです。
たとえば固定資産税。納税通知書が社長の手元に届いたまま、経理担当者が把握できずに放置、という話は珍しくありません。管理委託料も、自動引き落としになっていて「毎月払っているのに帳簿に載っていない」というケースがあります。
専門家報酬は特に要注意です。物件取得時に一度払ったきり、その後の決算では誰も確認していない——そういうケースが多いです。「あのとき払ったやつ、経費になってるよね?」が「なってなかった」になりがちな項目です。
計上漏れが続くと、どれくらい損するのか
仮に年間100万円の計上漏れがある場合、実効税率が約30〜34%とすると、毎年30〜34万円を余分に納税し続けることになります。10年続けると300〜340万円。決して小さな金額ではありません。
ただし、一点注意があります。「経費100万円で節税100万円」とはならないことです。経費として計上することで課税所得が100万円下がり、その税率分(30〜34%)だけ税金が減る、という構造です。「1,000万円の減価償却で1,000万円の節税」という誤解をしている社長も多いので、念のため確認しておきましょう。
特に見落としやすい2項目
7つの中でも、特に見逃しが多いのが減価償却費と専門家報酬です。
減価償却費は「お金が出ていかない」だけに、計上を忘れやすい非現金費用です。建物の取得価額や耐用年数の確認が必要で、附属設備(電気設備・給排水設備など)は建物本体と別々に償却できる場合もあります。毎期の決算時に「前期と変わりなく計上できているか」を確認する習慣をつけましょう。
専門家報酬は、取引のタイミングで支払いが発生するため、経費計上の時期と実際の支払い時期がずれることもあります。「いつ・誰に・何のために払ったか」を記録しておくと、決算処理がスムーズになります。
今すぐできること
難しい節税策を新たに導入しなくても、すでに払っているコストをきちんと経費に乗せるだけで、手元に残るお金は変わってきます。
今期の決算前に、法人名義の不動産に関わるすべての支出を一度棚卸ししてみてください。納税通知書、管理会社からの請求書、保険の証券、専門家への支払い明細——これらを並べて、帳簿と照らし合わせるだけでいいんです。
「この処理、合ってるかな」と感じる項目が一つでも出てきたら、顧問税理士に確認してみてください。計上漏れは気づいたときに直すのが一番、毎年の決算でこのリストを見返す習慣をつけておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。