先日、年商2億円の建設業の社長から、こんな相談を受けました。
「うちの会社で使っている車、ずっと個人で買ってきたんですが……もしかして損してますか?」
正直に言うと、かなり損をしています。自動車税、車検代、任意保険、ガソリン代、駐車場代——これだけで年間100〜200万円になることも珍しくありません。個人で払えば手取りから消えていくだけですが、法人で経費にすれば実効税率分だけコストが下がります。この差が、10年単位で500万円を超えることもあるのです。
法人なら「車の維持費」がほぼ全額経費になる
法人が業務で使用する車両は、車両本体だけでなく、維持にかかるコストのほぼ全額を経費として計上できます。
対象になるのは、自動車税・重量税、車検費用、任意保険料(対人・対物・車両保険)、ガソリン代・高速代、駐車場代といったものです。これらを個人で負担している社長は、毎年かなりの金額を「捨てている」状態といっても過言ではありません。
法人で購入・使用するだけで、この全額が会社のコストになります。ここを整理するだけで、大きな節税効果が生まれます。
節税の3パターン:どれを選ぶかで効果が変わる
社用車節税には、大きく分けて3つのアプローチがあります。それぞれ特徴が違うので、会社の状況に合わせて選ぶことが重要です。
① 新車購入|耐用年数に沿って減価償却
新車を購入する場合、車両本体は固定資産として扱い、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費に計上します。乗用車の法定耐用年数は6年で、定率法を使えば初年度の償却額が大きくなるため、購入直後の節税効果は高くなります。
ただし、購入価格を一括で全額費用化できるわけではありません。高額な車ほど、長期間にわたって少しずつ経費にしていく形になります。
② 中古車購入|最短2年で全額費用化
ここが、多くの税理士が「ぜひ知っておいてほしい」と言うポイントです。
中古車の耐用年数は、新車の耐用年数から経過年数を差し引いて計算します。重要なのは「法定耐用年数を超えた中古車は、耐用年数が最短2年になる」という点です。4〜5年落ちの中古乗用車を購入すると、購入価格を2年で全額費用化できるケースがあります。
仮に400万円の中古車を購入した場合、2年間で200万円ずつ経費に落とせる計算になります。これは新車購入では実現できない、スピード感のある節税です。決算期が近い場合、中古車の購入タイミングを意識するだけで当期の節税に直結します。
③ カーリース|月々の支払いが全額経費
手元のキャッシュを使いたくない、初期費用を抑えたいという場合はリースが有力な選択肢です。ファイナンスリースの場合、リース料は毎月の経費として計上できます。
購入と違って減価償却のルールを気にする必要がなく、会計処理がシンプルなのも魅力です。月額25万円のリース契約なら、年間300万円が丸ごと経費になります。
年間コスト150万円なら節税額は約50万円
計算してみましょう。
車両の維持費(自動車税・保険・燃料・駐車場など)が年間150万円かかる法人の場合、法人税の実効税率を約33%とすると、150万円 × 33% ≒ 約50万円の節税になります。これが「個人で払うか、法人で経費にするか」の差額です。10年続ければ500万円——この差を知っているかどうかだけで、手元に残るお金が大きく変わります。
注意点:「業務使用の記録」が命綱
ここで必ず押さえておきたいのが、業務使用割合の問題です。税務署が確認するのは「本当に業務で使っているのか?」という点です。プライベートの使用も混じっている場合、その分は経費として認められません。
対策として有効なのが運行記録です。日付・走行距離・訪問先・目的をメモしておくだけで、税務調査での立証が格段に楽になります。スマホのアプリで管理している方も多く、難しいことはありません。
また、社長の自宅から会社までの通勤も「業務使用」として認められるケースがありますが、これは個別の状況によるため、顧問税理士とあらかじめ整理しておくのが賢明です。
まだ個人で車を買っている社長へ
社用車の節税は、「知っているかどうか」だけで年50万円の差が生まれる、法人オーナーの典型的な特権です。今乗っている車が個人名義のままなら、法人への切り替えを検討する価値は十分あります。
次の顧問税理士との打ち合わせで「社用車の扱い、見直せますか?」と一言聞いてみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。