先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「会社に株と現金が数億円あるんだけど、毎年の法人税が重くてしんどい。何かいい手はないですか?」
こういう相談は、利益が安定してきた中小企業のオーナー社長からよく耳にします。問題なのは、その「眠っている資産の置き場所」です。
法人の金融資産には、容赦なく法人税がかかる
株式、投資信託、定期預金──これらを会社名義で保有している場合、その運用益や配当には法人税の実効税率(約33〜34%)がそのままかかります。
個人であれば、株の売却益や配当は申告分離課税で約20%に抑えられます。ところが法人の場合は事業所得と同じ扱いになるため、税率が一気に跳ね上がるのです。「とりあえず会社口座で運用しておこう」という判断が、知らず知らずのうちに税負担を増やしている、というケースは少なくありません。
収益不動産に組み替えると何が起きるのか
ここで多くの社長が見落としているのが、不動産の減価償却という仕組みです。
法人で収益ビルを購入すると、建物部分を法定耐用年数に応じて毎年「損金」として計上できます。実際に現金は出ていかないのに、税務上は経費として認められる──これが不動産ならではの大きな特徴です。
具体的な数字で見てみましょう。仮に3億円の株式を売却して、同額の収益ビルを取得したとします。建物比率を50%(1億5,000万円)、法定耐用年数を15年とすると、年間約1,000万円の損金が自動的に生まれる計算になります。
実効税率が最大20%近く変わるケース
年間1,000万円の損金が課税所得から差し引かれると、法人税の節税効果は年間300〜340万円ほどになります。これが毎年積み重なっていくわけですから、10年単位で見た場合の差は相当なものです。
さらに不動産からの賃料収入が安定して入ってくれば、その収益でローンを返済しながら、建物の償却で課税所得を圧縮できるという二重のメリットも生まれます。株や投信では得られない、不動産固有の構造です。条件が揃えば、実効税負担率が最大20%近く改善するケースもあります。
「出口」まで設計しないと後悔する
ただし、不動産には株にはないリスクがあることも忘れてはいけません。空室リスク、修繕費、そして流動性の低さです。急に現金が必要になってもビルはすぐに売れませんし、買い手がつかなければ値下げを余儀なくされることもあります。
また、減価償却が終わると税負担が元に戻り、売却時には譲渡益課税も発生します。「今の税負担を減らしたい」という動機だけで動くと、10年後に出口で詰まるケースが出てきます。全体の収支と出口戦略をセットで設計することが不可欠です。
まず「法人に眠る資産」を棚卸ししてみる
法人内に株や現金が積み上がっているなら、まずその金額とその税負担を正確に把握することから始めてみてください。「毎年これだけ法人税が出ていくのか」と気づいた瞬間、資産の置き場所を見直すきっかけになります。
節税は「知っているかどうか」で大きく差がつく領域です。法人資産の組み替えをまだ検討したことがないなら、次の決算前に担当の税理士に一度相談してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。