先日、年商3億円の建設会社を経営するA社長から、深刻な連絡が入りました。「税務調査が終わって、不動産の経費を大幅に否認された。追徴課税が500万円を超えそうだ」と。
聞いてみると、法人で保有するマンションの修繕費の処理や、役員社宅の家賃設定に問題があったとのこと。本人は「普通にやってきた」つもりだったそうですが、税務署の目線はまったく違いました。
不動産経費の否認は、税務調査で最も頻繁に指摘される項目のひとつです。今回は、知らないうちに踏み込んでいる3つの落とし穴をお伝えします。
落とし穴① 修繕費と資本的支出の「区分ミス」
「修繕費として計上したら税務署に認められなかった」という話は、後を絶ちません。
修繕費として全額一括経費にできるのは、原状回復のための支出に限られます。外壁の塗り直しや給湯器の交換といった工事でも、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする部分は「資本的支出」と認定され、資産計上して減価償却しなければなりません。
特に要注意なのが、1回の工事金額が20万円を超えるケースです。この金額を超えると、税務署は「修繕費か資本的支出か」を集中的に精査してきます。工事の目的・内容・金額の記録を現場写真とともに保存しておくことが、いざというときの防御になります。
落とし穴② 役員社宅の家賃が「少なすぎる」
「役員社宅は家賃の20%を徴収しておけば問題ない」と思っていませんか? これ、かなり危険な誤解です。
税務上、役員社宅として認められるためには、「賃貸料相当額」を本人から徴収する必要があります。この金額は固定資産税の課税標準額をベースにした計算式で算定されるもので、実際の賃料の20%という単純な話ではありません。
徴収額が賃貸料相当額に満たない場合、その不足分は役員給与とみなされ、所得税・住民税の課税対象になります。さらに、定期同額給与の要件を満たさなければ、法人側でも損金算入できなくなる可能性があります。知らずに設定した家賃が、二重のダメージを生むわけです。
落とし穴③ 別荘・リゾートマンションの「業務実態なし」認定
法人名義で別荘やリゾートマンションを購入し、経費計上しているケースは特に厳しく見られます。
税務調査では、「本当に業務目的で使っているか」の実態を徹底的に問われます。会議の記録、宿泊者名簿、業務上の必要性を示す書類がなければ、経費の全額が否認されるケースは珍しくありません。
さらに怖いのが重加算税です。隠ぺいや仮装と認定された場合、通常の加算税に加えて35%が上乗せされます。「節税のつもりが、逆に大きな損失になった」という事態になりかねません。実態のない経費計上は、節税どころかリスクの塊です。
この3つに共通しているのは、「なんとなく大丈夫だろう」という思い込みで処理されていることです。法人で不動産を保有している社長こそ、一度、顧問税理士と一緒に経費計上の方法を洗い直してみることをおすすめします。特に今期、修繕工事や社宅の新規設定を予定しているなら、着手前の確認が必須です。手を打つなら、調査が来る前の今のうちです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。