先日、年商3億円ほどの建設業の社長からこんな連絡をもらいました。「役員報酬を月60万円に下げて、残りは法人の不動産収益と経費で処理している。これだけで今年は年間150万円以上、税負担が減った」と、かなり満足そうな口ぶりでした。

でもその話を聞いて、私は少し心配になりました。その節税設計、2026年の改正が来たら崩れる可能性があるからです。

「法人・個人の税率差」を使う節税が標的になっている

役員報酬を低く抑えて所得税・住民税の負担を下げ、法人の不動産収益や経費で法人税側を圧縮する。この組み合わせは、うまくいけば年100万円以上の節税効果が出ることもある、定番の節税スキームです。

ただ、税務当局は今、この組み合わせへの調査を明らかに強化しています。特に問題視されているのが「役員報酬と業務実態の乖離」です。

役員報酬は期首に金額を決めたら1年間変更できない「定期同額給与」でなければ、損金に算入できません。それ自体は多くの社長が知っていることですが、「業務実態に見合わない低水準の報酬」についても、近年は否認事例が増えています。

さらに、個人と法人の税率差を意図的に使う取引への規制強化が、2026年度の税制改正の議論テーブルに上がっています。今のうちから準備しておかなければ、間に合わなくなる可能性があります。

盲点① 議事録が後付けになっていませんか

役員報酬の改定には、株主総会または取締役会での正式な決議が必要です。ところが中小企業の現場では、社長が口頭で「来月から50万円にしよう」と決め、議事録は後から遡って作る、というケースが少なくありません。

税務調査では「いつ、どのような根拠でこの金額に変更したのか」を必ず問われます。業績の変化、業務量の増減、会社の資金繰りの状況など、改定の合理的な理由が書面で説明できなければ、損金算入を否認される可能性が出てきます。

過去の変更について議事録を整備することは今でもできますが、調査が入ってからでは信頼性が落ちます。変更のたびに適切に決議・記録しておく習慣を、今から身につけておきましょう。

盲点② 不動産の収支管理が「雑」になっていませんか

法人名義の不動産を節税に使っている場合、修繕費・管理費・減価償却の計上が適切かどうかが、税務調査の焦点になります。

特に気をつけたいのが「資本的支出と修繕費の区分」です。たとえば200万円の内装リフォームを全額修繕費として計上した場合、税務官は必ず「これは資本的支出ではないか」と突いてきます。建物の耐用年数を延ばすような改修は、修繕費ではなく資産として計上し、減価償却するのが原則です。

「うちはちゃんとやっている」と思っていても、記帳の根拠となる書類——見積書、請求書、工事内容の説明——が揃っていないケースは意外と多いです。不動産の収支は、特に丁寧に整理しておく必要があります。

盲点③ 出口のことを考えていますか

節税の「入口」だけ設計して、「出口」を考えていない社長が多いです。

役員報酬を低く抑えると、法人に内部留保が溜まっていきます。それ自体は悪いことではありませんが、将来の廃業・事業承継・M&Aの際に、法人内の資産が多いほど税負担も大きくなります。

今は年間100万円以上の節税になっていても、10年後の出口で500万円以上の余分な税が発生するなら、トータルで得をしているとは言えません。今の節税設計が、将来のどんな出口シナリオと整合しているかを、一度税理士と確認しておくことをおすすめします。

今すぐやるべき3つのこと

2026年の改正が正式に動き出してからでは、対応が間に合わないこともあります。今のうちに以下の3点を整備しておきましょう。

  • 議事録の整備 — 役員報酬の改定履歴を、変更の根拠とともに記録・保管する
  • 不動産収支の見直し — 修繕費の区分、減価償却の計算を税理士と一緒に確認する
  • 出口戦略の確認 — 5年後・10年後のシナリオから逆算して、現在の節税設計を再評価する

「今の節税、本当に大丈夫か?」と少しでも感じた社長は、決算前に一度税理士に相談してみてください。改正の議論が具体化してからでは、手を打てる選択肢が狭まります。今動いておくことが、賢い経営判断です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。