先日、顧問先の社長から「車って法人で買ったほうがいいですよね?」という質問を受けました。答えは「はい、ほとんどのケースで法人名義のほうが有利です」。でも、その後に続く「なぜ?」「いくら得するの?」という部分を正確に理解している社長は、意外と少ないんです。

法人名義の車で経費になるもの

まず結論から言います。車を法人名義にすると、その車にかかるほぼすべてのコストが経費になります。自動車税(毎年5月に来るあれ)、任意保険料、ガソリン代、車検費用、ローンを組んでいるなら利息分、さらに駐車場代まで。これを1年分合計すると、車種や利用状況によっては軽く100万円を超えます。

国産セダン1台でも、諸費用を合わせると年間80〜120万円になることは珍しくありません。個人名義のまま自腹で払い続けているなら、毎年これだけの金額が節税の恩恵なしに消えていることになります。

「経費100万円=節税100万円」ではない

ここで多くの社長が誤解しているのがこの点です。

経費100万円は「利益を100万円減らせる」という意味です。税金が100万円まるごとゼロになるわけではありません。実際の税負担軽減額は「経費 × 実効税率」で計算します。

所得が800万円を超える中小法人の実効税率は、おおよそ34%前後。年間100万円の経費を新たに計上できれば、税負担の軽減額は年30〜35万円が目安です。

「30万円か、それほどでも」と思う方もいるかもしれません。でも5年続ければ150〜175万円、10年なら300〜350万円。車の買い替えサイクルと合わせて長期で見ると、これは相当な差になります。

注意点は「按分」と「記録管理」

法人名義にすれば全額経費になる、と思いたいところですが、一つ重要なルールがあります。経費にできるのは「事業に使った分」だけです。

週末の家族でのドライブや、完全にプライベートな移動に使った分は経費に計上できません。税務調査で問題になるのも、まさにこの「プライベート利用分の混入」です。

そのため、実務上は運行記録(走行日誌)の管理が必須になります。「いつ」「どこに」「何の目的で」「何キロ走ったか」を記録しておく。これがあれば、事業利用分の按分割合を合理的に説明できます。

手書きでも構いませんが、最近はスマホのアプリで自動記録できるものもあります。年30〜35万円の節税効果を守るための保険だと思えば、十分な手間対効果です。

今、個人名義の車を使っている社長へ

もし今、個人名義の車を会社の仕事に使っているなら、それは「自腹で仕事をしている」状態です。ガス代も保険も、税の恩恵を受けずに支払い続けているということ。

法人名義への切り替えは、次の買い替えタイミングが最も自然です。現在個人名義の車でも、会社が社長から「使用料」を払う形で一部経費化できる方法もありますが、どちらが有利かは車の時価や利用状況によって変わります。

まだ社用車の法人名義化を検討したことがないなら、次の決算前がベストなタイミングです。「そのうちやろう」と思っているうちに、また数十万円が手元から消えていきます。決算前に一度、税理士と試算してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。