先日、年商3億円の建設業の社長から、こんな相談を受けました。
「毎月のローン返済、任意保険、駐車場……全部個人で払ってるんですけど、法人にしたほうがいいって聞いて。実際どのくらい違うんですか?」
一緒に試算してみると、年間で110万円以上の差が出ることがわかりました。その社長は「もっと早く知りたかった」と苦笑いしていました。
個人のお財布から払い続けている「見えないコスト」
多くの社長が、車を個人名義のまま使い続けています。毎月のローン返済、自動車保険、駐車場代、ガソリン代、車検費用……。これらを何年も個人のお金で払い続けているとしたら、それは非常に大きな機会損失です。
法人名義にするだけで、これらのほぼすべてが経費として計上できるようになります。主な項目を挙げると、自動車税(年3〜11万円)、任意保険料(年10〜30万円)、ローン利息または減価償却費(年20〜50万円以上)、駐車場代(年12〜36万円)、燃料費・高速代(年12〜24万円)といった具合です。
合計すると、年間80〜150万円になるケースは決して珍しくありません。冒頭の社長の場合、試算したら年間約110万円の経費が新たに計上できることがわかりました。
「経費100万円」と「節税100万円」は別物
ここで多くの社長が勘違いするポイントがあります。「100万円経費化できる=100万円節税」ではありません。
法人税の節税効果は、経費の金額に法人実効税率をかけた金額になります。所得800万円以下の中小法人の場合、実効税率はおよそ23〜34%程度です。つまり、100万円を経費化した場合の実際の節税効果は、23〜34万円というのが現実です。
「100万円まるごと得した」わけではありませんが、毎年23〜34万円が手元に残り続けるのは十分に大きい。10年続けば230〜340万円の差になります。それを聞いた多くの社長は、「やらない理由がない」とおっしゃいます。
経費として認められるための2つの条件
社用車を経費として計上するために必要なことは、基本的に2つです。
ひとつ目は、車を法人名義で登録すること。個人名義の車を「業務でも使っています」と説明しても、税務調査では認められにくいのが実情です。車検証の名義を法人にして、保険も法人契約にすることで、経費計上の根拠が明確になります。すでに個人名義で購入した車がある場合でも、法人への売却という形で整理することが可能です。
ふたつ目は、業務使用の記録を残すこと。日付・目的地・走行距離を記録する「走行記録簿」をつけておくのが基本です。これを怠ると、税務調査で「プライベート使用分も経費にしているのでは?」と指摘されるリスクがあります。逆に言えば、記録さえ残っていれば、かなりの部分を経費にできます。
中古車を使うと減価償却が速くなる
新たに社用車を購入するなら、中古車の活用も検討に値します。中古車は法定耐用年数が短くなるため、減価償却が早く終わります。たとえば4年落ちの普通乗用車は耐用年数が2年となり、購入初年度から多くの費用を計上できます。
また、3月決算の会社が2月に車を購入した場合、その期に計上できるのは1ヶ月分の減価償却費のみです。節税効果を最大化したいなら、決算期から逆算したタイミングで購入することが重要です。これは顧問税理士と事前に相談しておくべきポイントです。
税務調査で指摘されやすいケース
社用車の経費計上は、税務調査でよく目をつけられる項目のひとつです。特に注意が必要なのは次のような状況です。
高額車を社用車にするケースは、業務上の合理的な理由を説明できないと、プライベート費用と見なされることがあります。また、配偶者や家族名義の車を会社の経費にするのは一般的に認められません。そして最も多い指摘理由が「走行記録がない」こと。記録がなければ業務使用の証明ができず、せっかくの経費計上が否認されてしまいます。
今すぐ確認してほしいこと
今お乗りの車が個人名義のままであれば、まず「年間でどのくらいの費用を払っているか」を書き出してみてください。自動車税、保険料、駐車場代、ガソリン代、車検費用……。合計額を見れば、法人名義に切り替えることの意義が実感できるはずです。
次の決算を迎える前に、一度顧問税理士と「社用車の経費化試算」を依頼してみてください。まだ法人名義に変えていないなら、今期中に動いておくのが得策です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。