先日、年商3億円の建設業の社長からこんな連絡が届きました。「税務署から調査の通知が来た。去年、不動産を買って節税したのがまずかったのかもしれない……」。

残念ながら、その懸念は的中していました。不動産は確かに強力な節税ツールです。でも、やり方を間違えると税務署の「レーダー」に引っかかりやすい。今回は、税務調査が入りやすい社長に共通する3つのパターンをお伝えします。

急激な利益圧縮が「フラグ」になる

不動産を購入した年に、前年比で課税所得が大幅に減ると、税務署のシステムが自動でフラグを立てます。

たとえば前期の課税所得が5,000万円だった会社が、不動産購入による減価償却を活用して当期は500万円になったとしましょう。たった1年で10分の1への圧縮です。税務署の側からすれば「何かあった」と映るのは当然のことです。

節税それ自体は合法ですが、変動幅が大きいほど調査対象に選ばれやすくなります。購入のタイミングを複数年にわたって分散させる、あるいは翌期以降も説明できる状態を維持しておくことが、調査リスクを下げるうえで重要です。

「形だけ」の管理会社は全額否認される

「家族名義で管理会社を作り、委託費を払うことで所得を分散する」——この手法は節税策として広く知られていますが、実態を伴わないまま形だけ整えると、支払った費用が全額否認されるリスクがあります。

税務署が確認するのは主に3点です。きちんとした委託契約書があるか。実際に管理業務を行っている記録(清掃日誌、入居者対応の履歴、修繕の発注書など)があるか。専用の事業口座を開設して資金を管理しているか。

この3つが揃っていないと、「名ばかりの管理会社」と判断されます。ある法人では、5年分の委託費2,800万円が一気に否認されたケースもあります。形式だけ整えても、実態審査は想像以上に厳しいものです。

身内への「安売り」は差額に課税される

「関連会社や家族に不動産を売るなら、多少安くてもいいだろう」と考える社長は少なくありません。ところが、時価を大きく下回る価格で関連者に不動産を譲渡すると、その差額に課税が生じます。

さらに深刻なのは、その行為が「隠ぺい」や「仮装」と認定された場合です。通常の過少申告加算税(10〜15%)ではなく、重加算税35%が課される可能性があります。

重加算税が課されると、ペナルティだけで数百万円になることも珍しくありません。また、一度重加算税が課されると、その後の申告に対しても税務署の目が格段に厳しくなります。低廉譲渡を検討しているなら、必ず事前に税理士を交えて時価評価を行い、根拠を文書化しておくことが不可欠です。

3つのパターンに共通する「説明できない」問題

今回挙げた3つのパターンに共通しているのは、「税務署に問われたときに説明できない」という点です。急激な数字の変動、実態のない取引、時価と乖離した売買——いずれも、根拠を示せないまま実行されているケースがほとんどです。

不動産節税は有効な手段ですが、「記録を残す」「実態を伴わせる」「時価を把握する」という基本を省略すると、節税どころか加算税込みで支払いが増える結果になりかねません。

不動産を使った節税をすでに実行している、あるいはこれから検討しているという社長は、決算をまたぐ前のタイミングで一度、顧問税理士とともに現状を整理しておくことをおすすめします。早めに動くほど、対処の選択肢は広がります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。