先月、年商3億円の建設会社を経営する社長と話していたとき、こんな言葉が出ました。「役員報酬を3,000万円にしたのに、手取りが増えた実感がまったくない」と。

計算してみると、所得税の最高税率45%に住民税10%が加わり、税・社会保険料まで含めると報酬の半分以上が消えている状態でした。稼ぐほど手元に残らない、典型的な「高報酬の罠」です。

報酬を上げるほど、なぜ手取りが増えないのか

個人の所得税は「累進課税」です。所得が増えるほど税率が上がる仕組みで、課税所得が4,000万円を超えると実効税率は55%に達します。

月250万円の役員報酬を取っている社長なら、年3,000万円の収入に対して所得税だけで1,000万円前後が飛んでいくイメージです。「もっと稼いでも税金になるだけ」と感じるのは気のせいではなく、実際にそうなっています。

だからといって、役員報酬を下げれば生活が苦しくなる。かといってそのままにすれば税負担は重くなる一方。この板挟みを解消する手段として注目されているのが、「法人×中古木造不動産」の組み合わせです。

中古木造不動産が節税ツールになる理由

ポイントは「耐用年数」にあります。

新築木造建物の法定耐用年数は22年。しかし築22年以上の中古木造建物は、残りの耐用年数がほぼゼロになるため、計算式によって耐用年数が最短4年になります。

耐用年数が短いということは、同じ金額の建物でも減価償却費が大きくなるということです。たとえば法人が4,000万円の中古木造物件(建物部分3,000万円)を取得した場合、耐用年数4年なら毎年750万円が減価償却費として損金算入できます。これが法人の利益を圧縮し、法人実効税率30%であれば年間約225万円の法人税削減効果が生まれます。

役員報酬の設計と組み合わせると、どう変わるか

ここからが本題です。

法人の利益が減ることで、まず法人税が下がります。さらに、役員報酬の設定を適正水準に調整することで、個人の所得税・住民税の負担も同時に最適化できます。

たとえば、従来の役員報酬3,000万円を2,400万円に下げ、その差額分を法人内で不動産の減価償却に充てる設計にすると、個人と法人を合わせた税負担が年間300万円以上圧縮できるケースがあります。具体的な金額は会社の規模や利益水準、物件の価格帯によって変わりますが、設計の方向性として押さえておく価値は十分にあります。

売るときの出口まで含めて考える

見落とされがちなポイントがもうひとつあります。

減価償却が終わった物件は、帳簿上の価値(簿価)がゼロに近くなります。この状態で売却すると売却益が発生しますが、それは一時的な課税です。一方、毎年の減価償却期間中に享受してきた節税効果は複数年にわたって積み上がっています。この「税の繰り延べ効果」を正しく理解した上で設計すれば、キャッシュフロー全体を最適化できます。

落とし穴:やってはいけないこと

この手法にはいくつか注意点があります。

まず、不動産の取得目的が「節税だけ」では税務署に否認されるリスクがあります。事業との関連性や賃料収入の実態など、事業性の説明が求められます。

次に、役員報酬の変更には厳格なルールがあります。期中での増減は原則として損金算入できないため、事業年度の最初から計画的に設計しておくことが必要です。

そして最も大事なことですが、物件の選定を誤ると節税効果どころか損失になります。立地・賃料・管理コストを総合的に見て、不動産としても成立する物件を選ぶことが大前提です。

今から動かないと、来期も同じことを繰り返す

役員報酬は事業年度開始から3ヶ月以内に決定するのが原則です。年度が始まってからでは変更が難しい。「まだ今期の役員報酬を見直していない」「不動産を検討しているが節税設計まで考えていない」という状況なら、今すぐ顧問税理士と相談することをおすすめします。

役員報酬と不動産を切り離して考えていると、どちらも単体では効果が限られます。組み合わせて設計することが、年300万円の節税を現実にするカギです。来期こそ手取りを変えたいなら、動き始めるのは今です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。