先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。「うちの車、ずっと個人名義のままなんですよね。何か問題ありますか?」

年商2億円の不動産会社を経営されている方で、創業10年。ベンツのEクラスを毎日乗り回しているのに、ずっと個人名義のまま。「そういうもんかな」と思って放置していたそうです。

結論から言えば、法人名義に切り替えるだけで、年間100万円近くが経費になる可能性があります。もったいない話です。

法人名義の車で経費になるもの

社用車を法人名義にすると、維持費に関わる出費がほぼまるごと経費に落とせます。

自動車税は車種によって年数万円。任意保険は年間10〜20万円台が多く、ガソリン代は使い方次第でかなりの金額になります。毎月払っている駐車場代も積み上げると年間20〜30万円になることも。そこに車検費用やローンの利息分まで加わります。

これらを合算すると、年間80〜100万円に達するケースは珍しくありません。高級車に乗っていたり、駐車場代が高いエリアにお住まいだったりすると、それ以上になることも十分あります。

「経費100万円」と「節税100万円」は別物

ただし、ここで一つ誤解しやすいポイントがあります。

経費が100万円増えても、節税額は100万円ではありません。節税額は「経費 × 法人実効税率」で計算されます。所得800万円超の法人なら実効税率はおよそ34%ですから、経費100万円の増加で節税できる金額は30〜34万円ほどです。

「思ったより少ないな」と感じた方もいるかもしれません。でも視点を変えると、ガソリン代も保険料も「どちらにせよ払うもの」です。個人名義のままなら税引き後のお金で払うことになりますが、法人名義にすれば経費として落とせる。毎年30万円の節税が10年続けば300万円。その積み上がりは決して小さくありません。

最大の落とし穴は「按分」

ここが一番重要な話です。

法人名義だからといって、車関連の費用が100%経費になるわけではありません。計上できるのはあくまで「業務に使った割合」だけです。

商談や営業、通勤などで週5日中4日使っているなら業務利用80%と言えるかもしれませんが、週末の家族旅行に使っている分は個人利用ですから経費から外す必要があります。業務利用割合が高いほど経費計上できる金額は増えますが、実態と乖離した按分をしていると税務調査で指摘されるリスクがあります。

走行距離の記録を日常的につけておく、業務の内容をメモしておくなど、根拠を残すことが大切です。具体的な按分の考え方は会社の実態によって異なりますので、必ず顧問税理士に確認してください。

切り替えのタイミングと手続き

個人名義から法人名義への変更は、帳簿上だけで済む話ではありません。売買契約と名義変更の手続きが必要です。

また、個人から法人への売却価格が時価と大きくかけ離れていると、それ自体が税務上の問題になることがあります。適正価格での売買、あるいは次の買い替えタイミングで最初から法人名義にする、というのがスムーズなやり方です。

今、個人名義の車を使っている社長は、次の更新や乗り替えのタイミングで法人名義への切り替えを検討してみてください。まず昨年の車関連支出(税・保険・ガソリン・駐車場・車検)を一覧にして試算してみると、金額の大きさに驚くはずです。その数字を持って顧問税理士に相談するだけで、話がぐっと具体的に動き出します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。