先日、決算3ヶ月前の社長からこんな相談を受けました。

「今期は売上が伸びたのに、手元に残るお金が思ったより少なくて。税金ってこんなに取られるものなんですかね」

年商が2〜5億円くらいになってくると、多くの社長がこのフェーズにぶつかります。稼げば稼ぐほど税金も増えていく。そこで「節税」という言葉を調べ始めるわけですが、ここで重要なのが「単発の節税策」ではなく「構造としての設計」という考え方です。

今日お伝えしたいのは、法人節税の3本柱とも言える「生命保険」「不動産」「役員報酬」を組み合わせた節税設計の話です。これを正しく設計すると、年間500万円前後の節税も現実的な数字になってきます。

3重構造の全体像

結論から言うと、効果が高い法人節税の組み合わせはこの3つです。

  • 法人契約の生命保険(保険料を損金算入)
  • 法人所有不動産(減価償却で利益を圧縮)
  • 役員報酬の最適ライン設定(社会保険料も含めた総コストを下げる)

それぞれ単独でも一定の効果はあります。ただ、この3つが組み合わさると節税の幅が格段に広がります。単純な足し算ではなく、相乗効果が生まれるイメージです。

①法人保険で損金を作る

一定の要件を満たす法人保険は、支払った保険料を損金に算入できます。これにより、毎年の課税所得を圧縮することができます。

たとえば年間300万円の保険料を支払い、その半分の150万円が損金算入できるケースでは、実効税率30%の会社なら年間45万円の節税効果が生まれます。保険商品によっては解約返戻金が戻ってくる設計もあるため、「節税しながら将来の資金を積み立てる」使い方ができます。

ただし、2019年の国税庁通達以降、全額損金算入できる商品はほぼなくなりました。損金割合は商品ごとに異なり、設計次第で効果が大きく変わる点には注意が必要です。

②不動産の減価償却で利益を圧縮する

法人で収益不動産を購入すると、建物部分を毎年減価償却費として計上できます。実際のキャッシュアウトがない年でも帳簿上は費用として処理されるため、課税所得を大きく圧縮できます。

たとえば、建物価格が5,000万円・耐用年数20年の物件であれば、定額法で毎年250万円の減価償却費を計上できます。これだけで年間75万円前後(実効税率30%想定)の節税効果になります。

さらに、家賃収入が法人に入ってくるので、将来の経費や役員報酬の財源としても使いやすくなります。

③役員報酬の最適化で社会保険料まで下げる

役員報酬は、高すぎても低すぎても損をします。

報酬を高く設定しすぎると、個人の所得税・住民税の負担が増えます。逆に低く設定しすぎると、法人側の利益が増えて法人税が増加します。最適なのは「法人税と個人所得税の合計が最も低くなるポイント」を見つけることです。

加えて、社会保険料は標準報酬月額に連動するため、報酬額の設定によって社会保険の負担額も変わります。年収2,000万円クラスの役員なら、報酬設定の見直し1つで法人・個人を合わせた税と社会保険の負担を年間100〜200万円以上改善できるケースもあります。

3つを組み合わせると何が起きるか

保険・不動産・役員報酬、それぞれの節税効果を合計すると、年間500万円という数字が現実的に見えてきます。たとえばこういうイメージです。

  • 法人保険の損金効果:年間60万円
  • 収益不動産の減価償却:年間250万円
  • 役員報酬の最適化(社保含む):年間190万円

合計で500万円。これを10年続ければ累計5,000万円の節税になります。

設計を誤ると逆効果になることもある

この3重構造は、「正しく設計されている」前提で機能します。

法人保険は、解約タイミングを誤るとその年に大きな雑収入が発生して、かえって税負担が増えることがあります。不動産については、土地の割合が高い物件は減価償却の恩恵をほとんど受けられません。役員報酬は一度決めると原則として期中に変更できないため、期初にしっかり設計する必要があります。

「節税になると聞いてやったけど、思ったより効果がなかった」という相談を受けることも少なくありません。会社の規模や業種、キャッシュフローの状況によって最適解は異なります。

まずは「自社の税負担の内訳」を把握することから

この3重構造を検討するなら、最初のステップは自社の現在の税負担を数字で整理することです。法人税・役員の所得税・社会保険料がそれぞれいくらかを把握すると、どの柱から着手するのが効果的かが見えてきます。

特に決算が近い社長は、今からでも翌期の役員報酬設定や保険加入を間に合わせることができます。まだ節税設計に手を付けていないなら、今期の決算が終わる前に一度、全体像を税理士と見直してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。