先日、年商3億円の建設会社を経営するS社長から、こんな相談を受けました。「毎期決算前に役員報酬を調整しているんですが、もっと根本的に削れる方法ってないんでしょうか」と。

顧問税理士はいる。役員報酬の調整もしている。なのに、なんとなく「まだ取りこぼしているものがある」という感覚が拭えない、というのです。

その感覚、正しいんです。本当に大きな節税効果を出している会社は、「1点突破」ではなく「3点組み合わせ」で設計しています。

法人保険で「今の税負担」を退職時に繰り延べる

2019年の税制改正以降、「法人保険は節税にならない」というイメージが広まりました。ただ、これは正確ではありません。改正後も、課税を「今」から「退職時」に繰り延べる設計は依然として有効です。

ポイントは退職金との組み合わせです。在職中に保険料の一部を損金算入しておき、解約返戻金を退職時の財源にする。退職金には「退職所得控除」という強力な控除が使えるため、同じ金額を役員報酬で受け取るより税負担を大幅に圧縮できます。

たとえば勤続30年の役員なら、退職所得控除だけで1,500万円。さらに課税対象は退職所得の2分の1なので、受け取り時の実効税率は現役時代と比べて格段に低くなります。「いつ受け取るか」を設計するだけで、手元に残る金額が数百万円変わります。

法人名義の不動産で毎年の損金を積み上げる

法人名義で不動産を保有すると、個人所有では得られない経費の扉が開きます。

建物部分は耐用年数に応じて毎期減価償却できます。1億円の物件であれば、年間数百万円の損金計上が可能です。修繕費も損金、固定資産税も経費として処理できます。これだけでも効果は十分ありますが、さらに強力なのが「役員社宅」との組み合わせです。

法人が物件を保有し、役員が適正な自己負担分だけ家賃を払う形にすると、残りの家賃相当額は法人の経費になります。役員個人が直接賃貸するのと比べて、実質的な住居コストを下げながら法人の課税所得も圧縮できる。一石二鳥の設計です。

ただし、どの物件でも同じように機能するわけではありません。購入前に税理士と具体的な数字で試算しておくことが重要です。

役員報酬の適正分散で実効税率差を活用する

これは節税の基本ですが、意外ときちんと設計できていない会社が多い。

法人税率(実効税率は約34%)と個人の所得税率では、「積み重なり方」が根本的に違います。法人に利益を残しすぎると法人税が重くなり、全部個人で受け取ると所得税・住民税・社会保険が重なってくる。この税率の谷間を狙うのが役員報酬設計の本質です。

配偶者や子どもが実際に法人業務に携わっているなら、合理的な給与を支払うことで法人の課税所得を減らしつつ、家族全体の税負担を分散できます。大切なのは「実態があること」。勤務内容・時間・給与額の整合性が崩れると、税務調査で否認されるリスクが高まります。書面や勤務記録の整備は必須です。

3つを重ねると、どのくらい変わるのか

この3つをバラバラに使うのと、組み合わせて設計するのでは、効果がまったく違います。

法人保険で退職金財源を積み立てながら、不動産の減価償却で毎期の損金を増やし、役員報酬の分散で課税所得をさらに圧縮する。この3層構造が機能すると、年500万円超の節税が十分に現実的な数字になります。

ただし、どの手法も「誰でも使える特効薬」ではありません。会社の規模、業種、キャッシュフロー、将来の事業計画によって最適解は変わります。特に法人保険は解約タイミングと退職計画の整合性が崩れると逆効果になることもあります。単体で考えず、3つをセットで設計することが肝心です。

今期の決算が終わる前に、一度整理してみてください

「節税」と聞くと、何かひとつの特効薬を探しがちです。でも、本当に大きく削れるのは、複数の手法が連動して機能するときです。

顧問税理士がいる方は、「法人保険・不動産・役員報酬の3点で設計を見直したい」と切り出してみてください。それだけで話の深さが変わるはずです。まだこの3つに手を付けていないなら、まず自社の現状把握から始めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。