先日、建設業を営む社長からこんな相談を受けました。「車、個人名義で持ってるんですけど、法人にした方がいいって聞いて。実際どのくらい違うんですかね?」
この質問、本当によく受けます。答えはシンプルで、法人名義にするだけで年間50〜60万円以上の経費が変わってくるケースがあります。今日はその仕組みを、なるべく具体的な数字で説明してみます。
300万円の車で計算してみると
たとえば300万円の乗用車を法人名義で購入したとします。
普通乗用車の法定耐用年数は6年です。定額法で計算すると、300万円 ÷ 6年 = 年50万円の減価償却費が毎年の経費に計上できます。
ここまでは知っている方も多いのですが、じつは見落としがちなのが「維持費」の部分です。
維持費もすべて経費になる
車を持てば当然、維持費がかかります。
- 自動車税:排気量にもよりますが年2〜4万円前後
- 任意保険料:年5〜10万円前後
- ガソリン代・高速代・駐車場代:使い方次第で大きく変動
法人名義の車であれば、これらも原則として全額、法人の経費に計上できます。
減価償却費と維持費を合算すると、年間60万円を超える経費になることも珍しくありません。個人名義のままでは1円も経費になりませんから、この差はかなり大きいです。
「経費が増える=節税額」ではない
ここで一つ、大切なことをお伝えします。「年60万円の経費 = 年60万円の節税」ではありません。
法人の実効税率が約30%であれば、60万円の経費増加による節税効果は年間約18万円です。
耐用年数の6年間で積み上げると、約108万円の税負担を減らせる計算になります。車1台分の節税効果として考えると、無視できない金額ですよね。
プライベートとの兼用車は按分が必要
気をつけたいのが、業務だけでなく休日のお出かけや家族の送迎にも使っている場合です。
法人名義にしたとしても、業務以外で使っている割合がある場合はその分を按分する必要があります。たとえば業務使用70%・プライベート30%なら、経費に計上できるのも70%分だけです。
全額を経費にしていると、税務調査で指摘されるリスクがあります。按分の根拠は「走行距離の記録」「業務日誌」などで合理的に説明できるよう、日頃から記録を残しておくことが重要です。
買い替えのタイミングが切り替えのチャンス
理想は、車を購入するタイミングで最初から法人名義にすることです。
すでに個人名義で持っている車を法人に移す場合は、適正価格での売買と名義変更の手続きが必要になります。価格設定を誤ると課税問題になることもあるため、この場合は必ず税理士を交えて進めてください。
逆に言えば、次に車を買い替えるタイミングで法人名義に切り替えるのが、最もスムーズで手間の少ない方法です。「次の車から法人で買う」と決めておくだけで、長期的に見れば大きな差がつきます。
社用車を個人名義のまま何年も使い続けている社長は、ぜひ一度、顧問税理士と「次の車は法人で」という話をしてみてください。思っている以上に、シンプルに節税できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。