先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。

「毎年、決算が終わると税金と社会保険料でごっそり持っていかれる。役員報酬を上げても、結局は手元に残らない感覚がある」

この感覚、心当たりのある社長は少なくないと思います。実は、役員報酬の設定を見直さないまま法人運営を続けていると、所得税・住民税・社会保険料の三重の負担が静かに積み重なっていきます。

「知らない社長」と「知っている社長」の差

多くの社長は、顧問税理士から言われるがままに役員報酬を設定します。利益が出ているなら高めに、業績が読めないなら低めに——というざっくりした基準で決めてしまっているケースが実に多い。

でも、手元にお金を残すことを本気で考えている社長は少し違う動き方をしています。単に報酬額を調整するのではなく、法人側に経費を厚く積み上げることで課税所得を圧縮するという発想を持っています。

その代表的な手法が、法人での不動産取得と役員報酬の最適化を組み合わせた「2段階節税スキーム」です。

法人不動産が「経費の塊」になる理由

法人が収益用不動産を購入すると、主に3つのコストが毎年経費として計上できます。

ひとつ目は減価償却費。建物部分は法定耐用年数に応じて毎年一定額を費用化できます。木造なら22年、鉄骨造なら34〜47年といった具合です。

ふたつ目はローンの支払利息。元本返済は経費になりませんが、利息部分はそのまま損金計上できます。

みっつ目は管理費・修繕費・固定資産税など、不動産を保有・運用するためのランニングコスト全般です。

たとえば、これらを合計して法人の年間経費が1,500万円増えたとします。法人実効税率が約33%とすると、それだけで年間500万円規模の税負担が軽くなる計算になります。投資した不動産がキャッシュを生みながら、毎年の税金も圧縮できるという構造です。

役員報酬の最適化で「2段階目」を刻む

法人の経費を増やして課税所得を下げる——これが1段階目です。そして2段階目は、役員報酬の水準そのものを見直すことです。

役員報酬を高く設定しすぎると、個人の所得税と住民税の合計税率が最大55%まで跳ね上がります。さらに社会保険料は標準報酬月額の上限まで連動して増えていきます。

一方、不動産収益が法人に入ってきて法人内に資金が蓄積されるなら、役員報酬をあえて適正水準まで下げ、社会保険料の負担を抑える選択肢が生まれます。

法人課税と個人課税の「どちらに税率が低い水準で課税させるか」をコントロールする——これが2段階スキームの本質です。

設計を誤ると逆効果になることも

ただし、この仕組みは設計を間違えると効果が出ないどころか、かえって手元を苦しくすることがあります。

注意すべき点をいくつか挙げると、まず不動産取得のための借入が増えすぎると、キャッシュフローが悪化します。経費が増えて税金は減っても、毎月の返済で資金繰りが詰まっては本末転倒です。

また、役員報酬を下げすぎると、個人の可処分所得が減るだけでなく、住宅ローン審査などに影響が出ることもあります。

さらに、同族会社の場合は税務調査で「経済的合理性があるか」を厳しく見られることがあります。不動産の取得価格・収益性・経費処理の根拠は、しっかり整理しておく必要があります。

まず「自社の税率マップ」を把握することから

このスキームを検討する前にやるべきことがあります。それは、現在の役員報酬水準での実効税率を法人・個人それぞれで確認することです。

法人の実効税率が高く、個人の所得税率も高い状態になっているなら、今まさに2段階節税スキームを検討するタイミングかもしれません。

顧問税理士がいるなら、「法人不動産の取得と役員報酬の最適化を組み合わせたシミュレーションをやってほしい」と具体的にリクエストしてみてください。

役員報酬を何となく設定したまま、毎年数百万円を余分に払い続けている社長は、思っている以上に多いものです。今期の決算前に、一度立ち止まって設計を見直す価値は十分あると思います。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。