先日、アパートとマンションを合わせて10棟近く所有している不動産オーナーの社長から、こんな相談を受けました。
「会社名義で車を買ったんだけど、自動車税とか修理代も全部経費になるよね?」
話を聞いていくうちに、これはかなり危うい状況だと気づきました。走行記録が一切ない。物件の管理はすべて管理会社に委託していて、オーナー自身が車で現地へ動く機会がほとんどない状態だったのです。
5月の自動車税通知書、受け取る前に確認を
毎年5月になると、法人名義の車に自動車税の納税通知書が届きます。「法人の車だから当然経費になる」と思っている社長は多いのですが、実は条件を満たしていないと、税務調査で経費を全額否認されるリスクがあります。
自動車関連費用(自動車税・車検・修理・ガソリン・保険料)を合計すると、年間50万円を超えることも珍しくありません。実効税率が約20%の法人であれば、これが全部経費として認められるかどうかで約10万円の差が生まれます。毎年です。5年続けば50万円。決して小さな金額ではありませんね。
経費として認められる3つの要件
法人の自動車関連費用を経費として計上するには、税務上3つの要件を満たす必要があります。
① 法人名義であること
個人名義の車を法人で使っている場合は、別途処理が必要になります。まず登録上の名義を確認しましょう。
② 業務上の使用実態があること
「業務で使っている」という事実が必要です。プライベートでしか使っていない車は当然ながら経費になりません。業務とプライベートが混在している場合は、按分計算が求められます。
③ 走行記録が保存されていること
これが最も重要で、かつ最も見落とされているポイントです。
不動産法人が特に危ない理由
この3要件の中で、不動産賃貸法人のオーナーが最も落としやすいのが「③ 走行記録」です。
製造業や小売業と違い、不動産賃貸業は物件管理を外注しているケースが非常に多い。管理会社に任せてしまっていると、オーナー自身が現地へ足を運ぶ機会が少なくなります。そうなると、実際の業務走行が少ない、もしくはほとんどない状態になりがちです。
さらに問題なのは、走行記録をつけていないこと。「いつ、どこへ、何の目的で走ったか」という記録がなければ、税務調査で「業務使用の実態がない」と判断されるリスクが一気に高まります。
税務調査官は「法人名義の車だから経費にしているはずだ」という前提で調査に入ります。そこで走行記録を求められ、出せなければ「業務使用の証明ができない」として全額否認という結論に至ることがあるのです。50万円が経費から外れると、法人税等が10万円増えます。それが数年分まとめて指摘されると、追徴額は軽く数十万円を超えることもあります。
今すぐ確認すべき3つのこと
「うちは大丈夫かな」と思った方は、今すぐ以下を確認してください。
まず、車の名義が法人になっているか。個人名義のまま「経費にしている」なら、処理の見直しが必要です。
次に、実際に業務で使っているかどうか。物件の確認、銀行への移動、打ち合わせの往復など、業務使用の実態を具体的に整理してみましょう。
そして、走行記録の保存状況。日付・目的地・走行距離・業務目的を記録したログが残っていますか?形式はExcelでもノートでもスマホのメモでも構いません。「記録が存在する」こと自体が重要です。
走行記録はシンプルでいい
「走行記録」と聞くと面倒に感じるかもしれませんが、形式にこだわる必要はまったくありません。
| 日付 | 行き先 | 目的 | 走行距離 |
|---|---|---|---|
| 5/12 | ○○物件 | 外壁塗装の立ち合い | 18km |
| 5/15 | △△銀行 | 融資の相談 | 12km |
このレベルで十分です。毎月まとめて記入するのではなく、その日のうちにメモしておくのが理想です。Googleスプレッドシートで管理すれば、クラウドに残るので紛失リスクもありません。習慣化してしまえば1日30秒の作業です。
法人不動産オーナーへ、5月にやっておくべきこと
自動車税の通知書が届く5月は、「うちの車の経費計上は本当に大丈夫か?」を見直す絶好のタイミングです。
法人名義で車があるなら、走行記録をつける仕組みを今期中に整備しておきましょう。一度習慣化してしまえば大した手間ではありません。でも記録がなければ、税務調査の際に数年分まとめて否認されるリスクがあります。
顧問税理士がいる方は、「うちの車の処理、走行記録まで含めて問題ないか一度確認してほしい」と相談してみてください。今のうちに手を打っておくのが、一番コストのかからない節税対策です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。