先日、都内でオフィスビルを1棟保有している社長から、こんな相談を受けました。
「うちの顧問税理士、毎年きちんとやってくれているはずなんだけど、なんかもっと経費にできるものがないかなと思って……」
その会社、購入して5年ほどの2.5億円の物件を持っていました。固定資産台帳を見せてもらったところ、一言で言えば「建物一式で47年償却」になっていました。
これ、じつは多くの法人オーナーが見落としている盲点なんです。
建物を「ひとつの資産」にまとめると損をする
法人で建物を取得したとき、多くのケースでは「建物」として一括登録し、鉄骨造なら47年、木造なら22年で減価償却します。
でも、建物の中には「建物本体」以外にもたくさんの設備が含まれています。電気設備(照明・分電盤など)、給排水設備(配管・衛生機器など)、空調設備、昇降機……。
これらは、税法上「建物附属設備」として建物本体とは別に計上できるのです。そしてこの違いが、年間の経費に数百万円単位の差を生みます。
なぜ別計上するとお得なのか
結論から言えば、耐用年数が圧倒的に短いからです。
建物本体が47年かけてじっくり償却されるのに対し、電気設備は15年、給排水設備も15年、空調設備は13〜15年程度。同じ取得価額でも、15年で割れば1年あたりの経費は3倍以上になります。
2〜3億円規模の物件なら、取得価額のうち1〜2割程度が附属設備に相当することも珍しくありません。仮に4,000万円分が附属設備だとすると、それを47年ではなく15年で償却するだけで、年間の経費は約85万円から約267万円へと跳ね上がります。
複数の設備を合算すれば、年500万円前後の経費の上乗せにつながるケースも十分にあります。実効税率30%で計算すると、手残りキャッシュフローで150万円以上の改善です。
なぜ多くの税理士がやっていないのか
この手法、知っている税理士なら当然やるはずです。でも実際にはやっていないケースが多い。
最大の理由は、手間がかかるからです。
建物附属設備を別計上するには、設計図や竣工書類をもとに「この設備の取得価額はいくらか」を根拠を持って算出しなければなりません。取得時の工事請負契約書や内訳明細書が残っていれば話は早いですが、古い物件や一括請負の場合は書類が不足していることも。
そのときは、建設費に占める設備費の割合を統計値などで按分して計算する方法もありますが、これには専門的な経験が要ります。税理士側に「やる気と実務知識」の両方が問われる、地味にハードルの高い論点なんです。
購入後に気づいても、諦めるのはまだ早い
「もう取得して3年経ってしまった……」という社長もいますが、手遅れではありません。
取得時に分離計上していなかった場合でも、過去の申告に遡って更正の請求ができるケースがあります(原則として5年以内)。また、今後の償却計画を組み直すだけでも、今期から経費の最大化が図れる場合があります。
まず確認すべきポイントはひとつ。固定資産台帳に「建物附属設備」という項目が別途立てられているかどうかです。「建物一式」としか記載がないなら、担当の税理士に「附属設備の分離計上はされていますか?」と聞いてみてください。
その一言が、年間数百万円の経費の違いを生むかもしれません。法人で不動産を保有しているなら、今期の決算前に一度台帳を見直しておくことを強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。