先日、年商4億円の不動産賃貸業を経営する社長から、こんな相談を受けました。「税理士から節税スキームを見直す必要があると言われたんだけど、具体的に何が変わるの?」という内容です。

話を聞いてみると、その社長は数年前から法人で複数の築古物件を購入し、加速度償却を活用して毎年かなりの金額を所得圧縮していました。それが2026年の税制改正に直撃しているのです。

2024年のタワマン規制は「始まり」に過ぎなかった

2024年、相続税評価額と市場価格の乖離を利用した「タワマン節税」への大規模な規制が入ったのは記憶に新しいと思います。あのとき「不動産節税はもう終わり?」と騒がれましたが、実はあれは序章でした。

税務当局はその後も、法人を使った不動産節税全般に対して継続的に網を絞ってきています。2026年の改正ではその動きがさらに加速し、これまで合法的に使えていた手法の一部が、実質的に封じられるか、効果が大幅に薄れる方向に変わっています。

特に影響を受けやすい3つのパターン

当てはまる社長は多いはずなので、一つずつ丁寧に確認してみてください。

① 築古物件の加速度償却による所得圧縮

木造や軽量鉄骨の築古物件は耐用年数が短く、取得価格を短期間で経費化できます。法人の所得を一気に圧縮できるため、多くの社長が使ってきた手法です。

ただし、2026年改正では「収益性よりも節税効果を優先して取得した」と判断されたケースに対して、課税当局の姿勢が明確に厳しくなっています。怖いのは、現在進行形のスキームだけでなく、過去に遡って否認されるリスクもある点です。「この物件を買った事業上の理由は何か」が説明できるかどうかが、今後の分かれ目になります。

② グループ法人間の評価差を使った資産移転

複数の法人を持っている社長に多いのが、グループ間で不動産を移転して評価差を作るパターンです。時価と帳簿価額の差を利用して、低い価格で関連会社に売却・移転する手法ですが、「経済的合理性がない」と判断された場合は否認対象になります。

2026年の改正では、グループ法人間取引の「適正価格」に関するガイドラインが強化されています。説明のつかない取引価格が残っている場合は、今のうちに整理しておくべきです。

③ 節税目的が前面に出た社宅スキーム

役員や社員の住宅を法人で借り上げ、家賃差額を経費にする社宅スキームは今も使えます。ただし「節税のために法人が借りた」という目的が明確なケースは、問題視されやすくなっています。

認められるための要件として、使用目的・賃料の計算根拠・実態の伴う使用実績の三点が、より厳格に求められるようになりました。形式だけ整えた社宅は、今後の税務調査で否認されるリスクが高いです。

「3割消える」とはどういう意味か

上記の3パターンに複合的に当てはまる場合、これまで活用できていた節税効果が30〜40%程度失われるケースが実際に出てきています。

仮に毎年1,000万円の所得圧縮をしていたとすれば、そのうち300〜400万円分が使えなくなるイメージです。法人税・住民税・事業税の実効税率を30〜35%とすると、手取りへの影響は年間100〜140万円単位になります。これが10年続けば1,000万円超の差になります。

「改正後に新たなスキームが使えなくなる」という話だけではなく、すでに実施中のスキームが税務調査で遡及否認されると、延滞税・加算税を含めた追徴課税が来る可能性もあることを忘れないでください。

今できる現実的な対策は2つ

一つ目は「現在使っているスキームが事業実態に即しているかの棚卸し」です。節税ありきで設計されたスキームは、今期中に実態を整備する必要があります。契約書の整備、議事録の作成、物件取得の目的整理など、やれることは今のうちにやっておくべきです。

二つ目は「今後の取得方針の見直し」です。節税目的で不動産を追加取得するプランがあるなら、2026年の改正内容を踏まえてROIを再計算することをおすすめします。以前の前提で計算した利回りと、改正後の実効値はかなり変わってくる可能性があります。

今使っている不動産節税スキームを、改正後の基準で評価し直す時間を、顧問税理士と今期中に持ってください。「まだ大丈夫だろう」という判断が、後から一番高くつきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。