先日、都内に収益物件を3棟持つ年商2億円の社長から、こんな相談を受けました。「顧問税理士から『来年の改正でうちのスキームがアウトになるかもしれない』と言われたんですが、具体的に何がどう変わるんですか?」と。
正直に言うと、不動産節税の「黄金時代」は終わりつつあります。「法人で不動産を購入し、減価償却で利益を圧縮して、損益通算で税負担を下げる」——これが10年以上、中小企業オーナーの定番戦略でした。ですが今、その前提が足元から揺らいでいます。
2024年のタワマン規制は、序章に過ぎなかった
2024年、高額タワーマンションの相続税評価額が市場価格ベースへと見直されました。「路線価で評価を大幅に圧縮して相続税を減らす」という鉄板スキームが、ほぼ封じられた形です。
あの改正を見て「うちは一般的な収益物件だから関係ない」と安心した方も多いと思います。ですが実は、タワマン規制はあくまで始まりでした。課税当局は今、不動産節税全体を対象に、じわじわと包囲網を広げています。
2026年に向け、特に注意が必要な領域は大きく5つあります。
課税当局が目を光らせている5つの領域
① 高額不動産評価の適正化(継続・強化)
タワマン規制の流れは2026年以降も続きます。「評価額と実勢価格のギャップを使った節税」は、引き続き監視の対象です。都心の高額物件を相続対策に使っている場合、以前と同じロジックがそのまま通じなくなるリスクが高まっています。
② 不動産損益通算の制限強化
法人内で不動産の赤字を事業利益と合算し、税負担を下げる手法に対し、制限を設ける方向で議論が進んでいます。不動産事業と本業を切り離した課税、つまり「リングフェンス課税」の流れが強まる可能性があります。特に不動産事業が赤字前提の構造になっているケースは要注意です。
③ SPC・組合スキームへの規制
合同会社や匿名組合を活用した不動産スキームは、節税効果が高い分だけ当局の目が向きやすい構造です。「形式的な節税と実態のある節税」の線引きが厳格化されており、スキームの設計が少しでも恣意的に見えると否認リスクが跳ね上がります。
④ 減価償却節税の審査厳格化
中古物件を短期で一括償却して利益を一気に圧縮する——この手法は長年使われてきましたが、「節税目的が優先された購入」と認定されるリスクが年々高まっています。投資としての実態、つまり収益性や事業上の合理性がより厳しく問われるようになっています。
⑤ 不動産法人化への監視強化
個人から法人へ不動産を移す「法人化節税」も例外ではありません。移転時の価格設定や役員報酬の水準が「租税回避目的」と見なされると、税務調査で否認されるリスクがあります。特に短期間に複数物件を一気に法人化したケースは、説明責任が求められやすくなっています。
「今まで通り」が最もリスクの高い選択
この5つに共通しているのは、「制度の隙間を突くスキームほど早く規制される」という傾向です。合法であっても、当局が「節税の行き過ぎ」と判断すれば、制度変更や否認処分につながります。
税制改正は通常、施行の1〜2年前から水面下で議論が始まります。「気づいたときには手遅れ」というのが、不動産節税の世界では珍しくありません。そして最も危ないのは、「去年通じたから今年も使う」という惰性の継続です。
今動くことが最大の対策
今すぐできる最善策は、現在使っている節税スキームを税理士と一緒に棚卸しすることです。特に「節税目的で不動産を購入した」「SPCや組合スキームを組んでいる」「最近法人化した」という方は、現状の確認を早めに行うことをおすすめします。
制度が本格的に変わった後では、取れる対策が大幅に限られます。スキームの見直しや組み替えには時間がかかる——だからこそ、「まだ大丈夫」な今のうちに動く価値があります。
2026年以降も使える節税の土台を作るために、今期中に一度プロの目でポートフォリオ全体を点検しておくのが、今できる一番賢い投資だと思います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。