先日、ある社長からこんな言葉を聞きました。「自動車税の通知が来るたびに、なんだか損した気分になるんですよね」と。

毎年5月になると、自動車税の納付書が届きます。排気量によって金額は異なりますが、普通乗用車で3万〜5万円、大きめのSUVやミニバンになると6万〜10万円近くかかることもあります。

でも、ここで一つお聞きしたいのです。その自動車税、個人で払っていませんか?

個人名義のままだと「ただの出費」で終わる

個人で車を所有していると、自動車税は単なる家計の出費です。どれだけ仕事で使っていても、個人の財産として所有している以上、経費計上はできません。税引き後のお金から払い続けているわけです。

ところが法人名義にすると、話がまるで変わります。

事業用車両として法人に登録すれば、自動車税は「租税公課」として全額経費計上できます。これだけでも十分な恩恵なのですが、実は車にまつわるコストはもっとあります。

「車周り」のコストがまるごと経費になる

自動車税だけが変わるのではありません。法人名義の事業用車として使えば、車に関わるほぼすべての費用が経費の対象になります。

自動車保険(任意保険・自賠責保険)、ガソリン代や高速代、毎月の駐車場代、車検や定期整備の費用——これらがすべて合算されます。

オーナー社長が使う車の維持費をトータルすると、年間30万〜35万円になるケースも珍しくありません。法人の実効税率はおよそ30%ですから、年35万円分の費用をすべて経費にできれば、節税効果は約10万円になる計算です。

5年で50万円。10年乗り続ければ100万円です。長く使えば使うほど、法人名義の恩恵は積み上がっていきます。

税務調査で見られるのは「実態」

ただし、法人名義にすれば何でも経費になるかというと、それは少し早合点です。

税務調査で必ずチェックされるのが「業務使用の実態があるか」という点です。たとえ法人名義であっても、実際にはほぼプライベートでしか使っていない場合、経費として否認されるリスクがあります。

だからこそ大切なのが「走行記録」です。日付、訪問先や目的(「○○社打ち合わせ」「△△展示会出張」など)、走行距離を記録しておくだけで、業務使用の証跡として十分機能します。最近はドライブレコーダーと連携したアプリや、スマートフォンで自動記録できるサービスもあるので、デジタルで管理するのが手軽です。

プライベート利用がある場合は「按分」で対応

「完全に仕事専用の車」という社長は、現実的にはほとんどいません。家族の外出や休日のドライブにも使う、というケースがほとんどでしょう。

そこで使うのが「按分」という考え方です。走行距離のうち業務使用分の割合を出し、その割合だけ経費計上するやり方です。

たとえば、年間走行距離1万キロのうち7,000キロが業務使用なら按分率は70%です。年35万円の車関連費用があれば、経費になるのは24.5万円。それでも節税効果は約7万円あります。

按分率の根拠となる記録をどう残すか、また何%が妥当かは税理士によっても見解が分かれることがあります。自己判断で決めず、顧問の先生と事前に確認しておくのが安心です。

今から切り替えるにはどうする?

現在、個人名義で車を所有している社長が法人に切り替えるには、大きく二つの方法があります。

一つは、次の車検や買い替えのタイミングで最初から法人名義で購入する方法。これが一番シンプルです。もう一つは、個人所有の車を法人に「売却」して名義変更する方法ですが、売却価格の設定や手続きに注意が必要なため、必ず税理士に相談してから進めてください。

毎年5月に届く自動車税の通知書を見てため息をついているなら、それはひとつのサインです。「なんとなく個人で払い続けていた」という積み重ねが、長い目で見ると大きな差になります。まだ法人名義への切り替えを検討していないなら、今期の決算前に一度税理士と話してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。