先日、年商3億円の製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「役員報酬を1,500万円にしているのに、手元に残るのは850万円くらい。毎年650万円以上が税金と社会保険で消えていく感覚がどうしても拭えなくて」と。
この感覚は、正確です。年収1,500万円の役員報酬には所得税・住民税・社会保険料が複合的にかかり、合計で最大55%近くが課税されます。稼いでも稼いでも半分近くが消えていく——それが役員報酬の現実です。
「じゃあ報酬を下げましょう」だけでは話が終わりません。報酬を減らせば手取りが減るだけ。大事なのは「税負担を下げながら、手元に残る富を増やす」設計です。
「個人でもらう」から「法人の資産に変換する」へ
ここで視点をがらっと変えるのが、今回の核心です。
役員報酬として全額引き上げるのではなく、稼いだお金の一部を「法人名義の収益不動産」に変換して保有させる。これが年400万円節税の実態です。
特に効果が大きいのが、木造の収益物件(築古アパートや戸建て)の法人購入です。木造物件は耐用年数が短く、中古であれば建物部分を4年間で一気に償却できます。購入価格2,000万円の木造アパートで建物評価が1,600万円だとすると、年400万円の減価償却費が法人の経費として計上されます。
年400万円節税の中身を分解する
この400万円の減価償却費が生み出す効果を、個人と法人に分けて整理してみましょう。
まず法人側。毎年400万円超の経費が積み上がることで法人の課税所得が圧縮され、法人税の節税効果は年約140万円になります。
次に個人側。法人の利益が圧縮されることで役員報酬を一部見直す余地が生まれ、所得税・住民税が年約260万円ほど軽減できる計算です。
合計で年約400万円。5年間続ければ2,000万円の節税効果です。これが「報酬を不動産に変換する」戦略の真価です。
必ず知っておくべき「出口」の話
ただし、この手法には重要な落とし穴があります。
法人で不動産を保有した場合、売却時に法人税が発生します。減価償却で経費計上した分は「取得価額を下げた」扱いになるため、売却時の利益として課税されます。つまり節税効果には「今の税負担を将来に繰り延べる」という性格があります。
「買う前に売る計画を立てる」。これが不動産節税を成功させる絶対条件です。売却先をどうするか、売却時期はいつか、売却後の資金をどう活用するか——この出口設計なしに購入に踏み切ると、税負担が一時期に集中して苦しくなるケースも実際に起きています。
また、不動産である以上、空室リスクや修繕費用も現実のコストです。節税目的だけで収益性の低い物件を掴まされると、本末転倒になります。
役員報酬に「手詰まり感」を持つ社長へ
個人の役員報酬だけで節税しようとすると、どうしても限界があります。給与所得控除の上限は195万円で固定されており、それ以上は圧縮できません。
一方で法人と個人の間で「お金の置き場所」を戦略的に考えると、まだ打ち手は残っています。不動産への変換はそのひとつに過ぎませんが、年収1,000万円を超えている社長なら一度は試算してみる価値がある手法です。
今の役員報酬に「もったいない感」を抱えているなら、まずは顧問税理士に「法人での木造収益物件購入」の可能性を投げかけてみてください。数字を並べてみるだけで、見える景色がきっと変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。