先日、顧問税理士と長年付き合っている50代の社長からこんな話を聞きました。

「毎年申告はしてもらってるけど、こっちから聞かないと提案なんて来ない。もしかして損してるのかな」

その感覚、正しいと思います。税理士は「申告業務」のプロであって、「節税提案」のプロとは限らないからです。特に役員報酬まわりは、設計ひとつで手取りが年間数十万円変わることがあるのに、なぜかあまり語られません。

そこで今回は、多くの社長がまだ活用できていない役員報酬の節税策を、効果の大きい順に3つ紹介します。


第3位:役員社宅で住居費を経費に落とす

役員社宅とは、会社が物件を賃借して社長に又貸しする仕組みです。「え、それって会社の経費になるの?」と驚く方もいますが、合法的な節税手法として広く使われています。

仕組みはシンプルです。会社が月20万円の物件を借り、社長は国税庁の通達に基づいた「賃料相当額」(通常は実際家賃の10〜20%程度)を会社に支払う。差額の大部分が会社の経費になります。

仮に年間120万円の経費増になれば、実効税率30%で計算すると約36万円の節税効果。住んでいる場所は変わらず、月々の出費が減るわけですから、使わない手はありません。

ただし、計算方法を誤ると現物給与とみなされてしまうことがあります。導入前に一度、数字の確認をしておくのが安心です。


第2位:配偶者を役員にして報酬を分散させる

日本の所得税は累進課税です。つまり、社長ひとりに報酬が集中するほど、税率が上がり手取りが減る構造になっています。

ここで活用できるのが「役員報酬の分散」です。実際に業務に従事している配偶者を役員として登記し、適正な報酬を支払うことで、個人単位の課税所得を下げることができます。

たとえば、社長の報酬を月20万円減らして配偶者に移すだけで、世帯全体の税・社会保険負担が年間50万円以上改善するケースも珍しくありません。

もちろん、「名目だけの役員」は認められません。実際の業務内容を明確にして、議事録などで役割を記録しておくことが前提です。形式だけ整えようとすると税務調査で否認されるリスクがあるので、実態を伴った設計が重要です。


第1位:役員退職金の設計(効果は数千万円級)

正直に言って、これを知っているかどうかで「社長の一生の手残り」が大きく変わります。

役員退職金は、在任年数×最終月額報酬×功績倍率(一般的に2〜3倍が目安)という計算式で算出します。この金額が全額、会社の損金(経費)になります。つまり、退職金を支払うタイミングで会社の利益を大きく圧縮できるのです。

さらに受け取る側の課税も有利です。退職所得控除を差し引いた後、残った金額の半分にしか課税されません。30年勤続であれば控除だけで1,500万円。それを超えた分も1/2課税ですから、通常の給与と比べると税負担が段違いに軽くなります。

30年勤続の社長が適切な設計をしていれば、節税効果は数千万円規模になることも珍しくありません。

問題は「退職するときに慌てて考える」社長が多いことです。功績倍率の水準、最終報酬の設定、退職時期のタイミング──これらは現役のうちから計画的に設計しておく必要があります。


今日から動けることがある

この3つの節税策に共通しているのは、「知っているかどうか」よりも「設計しているかどうか」で結果が変わるという点です。

役員社宅なら今期から始められます。報酬分散は来期の改定に合わせて組み込めます。退職金の設計は早ければ早いほど効果が大きくなります。

今の顧問税理士に「役員退職金の設計はどうなってますか?」と聞いてみてください。明確な答えが返ってこなければ、それ自体がひとつのサインかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。