先日、倉庫として使う建物を法人名義で持っている製造業の社長から、こんな相談を受けました。
「決算をまとめてみたら利益が想定より多くて、税金がかなり出てしまった。でも不動産の経費はちゃんと入れているはずなんですが……」
話を聞いてみると、計上していた経費は固定資産税と火災保険料だけ。本来は計上できる項目がいくつも抜け落ちていました。試算したら、取り損ねていた経費は年間で150万円を超えていました。
法人で不動産を持つと、個人とは経費の扱いがかなり変わります。「個人感覚のまま」で処理してしまうと、毎年コツコツと損をし続けることになります。今日は、社長が見落としやすい6項目のうち、特に影響が大きい3つをお伝えします。
第3位:固定資産税の計上漏れ
固定資産税は個人の持ち物なら「仕方ない支出」として処理されますが、法人名義の不動産であれば損金(経費)にできます。ところが、個人で不動産を持っていた経緯があると、「税金だから経費にならない」という感覚が抜けきれないまま処理されてしまうことがあります。
年間の固定資産税は物件の規模にもよりますが、中小企業が保有する事業用不動産では30万〜50万円になることも珍しくありません。これを何年も計上漏れしていたとすると、損失の積み上がりは相当なものになります。
意外とシンプルなミスですが、「当たり前に払っている税金」は見落とされやすいのが現実です。
第2位:修繕費と資本的支出の区分ミス
建物に手を入れるとき、「修繕費」として全額その期に経費処理できるケースと、「資本的支出」として減価償却が必要なケースに分かれます。この区分を間違えると、節税のタイミングを大きく逃すことになります。
シンプルに言うと、現状維持のための工事は修繕費として一括経費化できます。一方、機能や価値を高める改良・改修工事は資本的支出として処理し、減価償却で数年に分けて経費化することになります。
例えば、雨漏りを直す工事は修繕費ですが、外壁を防水加工に全面リフォームするような工事は資本的支出になりやすい。この判断を誤って資本的支出を修繕費として処理してしまうと、税務調査で指摘を受けるリスクもあります。逆に、修繕費として一括計上できるものを資本的支出にしてしまうと、今期の節税効果を損なってしまいます。
工事の前に税理士に一言確認するだけで、大きな差が出るところです。
第1位:建物の減価償却の按分ミス
法人不動産の経費で、最もインパクトが大きいのがこれです。不動産を購入したとき、土地と建物の代金が一緒になっていることがほとんどですが、減価償却できるのは建物だけです。土地は減価償却の対象外なので、土地と建物の価額を正しく分ける必要があります。
この按分に固定資産税評価額を使うのが一般的な方法ですが、購入時の契約書に建物価額が明示されていない場合、なんとなく「土地7:建物3」などと処理されていることがあります。
評価額の比率を正しく計算すると建物比率が高くなるケースも多く、適切に按分できていれば年間100万円以上の減価償却費を計上できたのに、という例は珍しくありません。購入当初の処理が間違っていると、その後ずっと毎年過剰な税負担が続くことになります。
残り3項目は「見えにくい経費」
今回紹介した3項目の他にも、法人不動産には計上を見落としやすい経費があります。管理費・管理委託費の計上タイミング、ローン利息の処理方法、そして社宅として役員が使用している場合の賃料設定。これらも見直してみると、経費の漏れが出てくることがあります。
「払っているのに損をしている」状況を防ぐために
法人で不動産を保有している社長に多いのは、「税理士に任せているから大丈夫」という思い込みです。ただ、毎年の申告処理を機械的に行っているだけでは、こうした最適化の余地が見過ごされることがあります。
決算が近づいてきたら、「法人不動産の経費、全部拾えていますか?」と一度税理士に確認してみてください。特に不動産を複数年にわたって保有しているなら、過去の按分計算が正しかったかどうかも含めて見直す価値があります。
年間150万円の差は、10年で1500万円です。見直しにかかる時間を考えると、費用対効果は十分すぎるほどあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。