先日、ある社長からこんな連絡をもらいました。「3月決算なんですが、不動産絡みで今から動ける節税って何かありますか?」
こういう相談、毎年この時期に集中します。正直、決算月の直前では手遅れになる手法もあります。でも、「今から動けば間に合う」ものも確かにある。今回は不動産を絡めた節税手法の中でも、特に効果の高い3つをお伝えします。
修繕費を期末前に計上する
最初に押さえておきたいのが、修繕費の計上です。
3月末までに完工した建物や設備の修繕工事は、その事業年度の損金として算入できます。外壁塗装、屋根の防水工事、給湯器の交換など、「そのうちやらないと」と思っていた工事があるなら、3月末に間に合わせることを優先してください。
100万円の工事なら、法人税率によりますが最大30〜34万円程度の節税になります。ここで重要なのは「請求書の日付」ではなく「工事が完了した日付」です。4月にまたいだ工事は来期の経費にしかなりません。業者への発注は、今すぐ動き出すことをおすすめします。
なお、工事の内容によっては修繕費ではなく「資本的支出」として資産計上が必要なケースもあります。原状回復を目的とした工事は修繕費、機能を向上させる工事は資本的支出とされるのが一般的です。どちらに該当するかグレーな場合は、税理士に一言確認しておくと安心です。
役員社宅で会社と個人の両方に得をさせる
次に「役員社宅」の活用です。知っている社長は多いですが、実際に整備できていないケースが意外と目立ちます。
仕組みはシンプルです。法人名義で物件を取得または賃借し、そこに役員が入居します。役員は国税庁の計算式で算出した「賃料相当額」を法人に払えばよく、残りの住居費は法人の経費になります。
賃料相当額は、固定資産税評価額や床面積をもとに計算するため、市場の家賃より大幅に低くなるのが通常です。たとえば月20万円の家賃のマンションでも、役員の負担が5〜6万円程度で済むケースもあります。差額の14〜15万円が毎月法人の経費になるわけです。
ただし、「名目だけ社宅にした」では税務調査で否認されます。賃料の支払い記録をきちんと残す、実際に役員がそこに居住しているなど、実態を伴わせることが絶対条件です。書類の整備を含め、早めに動くほど安全です。
中古物件で短期集中の減価償却を狙う
3つ目は、中古物件を使った短縮耐用年数の活用です。
新築建物の法定耐用年数は木造で22年、鉄筋コンクリートで47年と長期です。つまり、減価償却費をゆっくりとしか計上できません。一方、中古物件は取得時の築年数に応じて耐用年数を短縮できます。計算式によっては4〜10年といった短期間での全額償却も可能です。
1,000万円の中古物件を5年で償却できれば、毎年200万円の減価償却費が損金に算入されます。キャッシュアウトなしで利益を圧縮できる、法人節税の中でもパワフルな手法のひとつです。
ただし、この手法は節税効果が大きい分、税務調査でも見られやすいというのが実情です。耐用年数の計算根拠、物件の取得価格の妥当性、実際に事業目的で使用しているかどうか——これらの証拠を整えておくことが欠かせません。「やってみようかな」という段階から、必ず税理士に相談したうえで動くことをおすすめします。
3月決算の社長は「今すぐ」が肝心
3つの手法に共通するのは、「思いついたときに動かないと手遅れになる」ということです。
修繕費は3月末までの工事完了が絶対条件。役員社宅は物件手配と書類整備に時間がかかります。中古物件の短縮償却は購入そのものが前提です。どれも「決算日の3日前に思い立って実行できる」ようなものではありません。
今期の節税に動くなら今すぐ。来期に向けた仕込みも、今から始めるのが正解です。特に役員社宅や不動産取得は、来期に向けて今から準備しておくことで、税務的にも無理のない形で進められます。
まずはかかりつけの税理士に「不動産で節税できることはありますか?」と一言聞いてみてください。その一言が、来期の利益を数百万円変えることもあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。