法人で不動産を持つと税務調査に狙われやすくなる、という話を聞いたことはありますか?

実は、管理が雑な法人は調査の選定率が約3倍になるとも言われています。愛知県で製造業を営むK社長(仮)の事例が、まさにその典型でした。

K社長に税務調査が入った理由

K社長は節税と資産形成を兼ねて、数年前に法人名義で収益物件を取得しました。毎月安定した家賃収入が入ってくるものの、本業の製造業と同じ口座で管理したまま3年が経過。特に問題が起きていなかったこともあり、帳簿の整備は後回しになっていました。

そこに税務調査が入りました。

調査官が指摘したのは、次の3点です。

① 本業と賃貸の口座・帳簿が分離されていない

製造業の売上と家賃収入が同じ口座に混在していると、どの収入がどの事業に対応するのかが不明瞭になります。帳簿の整合性を問われるのはもちろん、「管理が雑な会社」という第一印象を与えてしまうのが痛いところです。

② 修繕費と資本的支出の区分が曖昧

外壁塗装や設備交換が「修繕費(全額損金)」なのか「資本的支出(減価償却)」なのか。この線引きを曖昧にしていると、過大な費用計上として一部が否認されるリスクがあります。目安は工事費用が20万円超、または原状回復を超えた価値向上があるかどうかです。

③ 役員への賃貸条件が市場家賃より大幅に低い

法人が役員に低額で物件を貸している場合、差額が「役員給与」とみなされ、給与課税が発生するリスクがあります。市場家賃の50%を下回ると特に問題視されやすく、K社長のケースでも役員社宅家賃の設定が著しく低かった点が指摘されました。

「管理が雑」な法人が狙われる理由

税務調査の対象を選定する際、当局は申告内容を機械的にスコアリングしています。収益物件を持つ法人は、複数の収益源があり、費用計上に恣意性が生まれやすい。そこに口座分離がない、修繕費が多額、役員関連取引がある、という要素が重なると「要確認」フラグが立ちやすくなります。

重加算税が課されると、通常の過少申告加算税(10〜15%)と比べて35%という高率が適用されます。本来払わなくて済んだ税金の上に、多額のペナルティが乗ってくる。K社長も「最初からきちんと分けておけばよかった」と悔やんでいました。

申告是認率68%の壁を越えるための初期設計

税務調査が入った場合、申告内容がそのまま認められる(是認)割合は68%とも言われています。裏を返せば、3割以上の法人で何らかの修正が生じているということです。

この壁を越えるには、取得時の「最初の設計」が全てです。不動産を法人で取得するタイミングに合わせて、以下の3点を整備しておきましょう。

  • 賃貸専用の法人口座を開設し、家賃収入・経費を本業と明確に分離する
  • 修繕工事は見積書・工事内容を必ず保存し、資本的支出か修繕費かの判断根拠を記録に残す
  • 役員社宅として使用する場合、市場家賃の50%以上を役員負担とする条件で賃貸借契約書を作成する

これだけで、帳簿を見た調査官の印象は大きく変わります。整備が行き届いている法人ほど、深掘りされにくくなるのが現実です。

年1回の「棚卸し」を習慣に

法人不動産の税務リスクは、取得時だけでなく、毎年の確認作業でも変わってきます。特に修繕履歴と役員への賃貸条件は、時間が経つほど管理が甘くなりがちです。

決算前に一度、顧問税理士と「不動産関連の帳簿と役員賃貸条件の確認」を議題に入れる習慣をつけておくのがおすすめです。K社長のようなケースを防ぐには、書類が揃っているうちに確認することが何より大切です。

法人で収益物件を持っている方は、ぜひ今期中に設計を見直してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。