先日、賃貸マンションを数棟持つ社長からこんな連絡が来ました。「税務調査が入って、200万円近い追徴になった。外壁を直しただけなのに、なぜ?」
話を聞いてみると、「あるある」な3つのパターンにきれいに当てはまっていたんです。不動産賃貸業、特に法人で運営しているケースは税務署が目を光らせやすい領域のひとつ。今回は調査官が必ずチェックする3つのポイントをお伝えします。
外壁塗装を「修繕費」にしていませんか?
まず確認してほしいのが、建物の修繕費の処理です。
「修繕したのだから修繕費でしょ」と思いがちですが、税務上はそう単純ではありません。外壁の全面塗り直しや屋根の葺き替えは、建物の価値を高めたり耐用年数を延ばす工事とみなされ、「資本的支出」として減価償却が必要になります。これを全額その年の経費にしていると、調査で即座に指摘されます。
工事費用300万円を一括で修繕費計上していた場合、数百万円単位で否認されるケースもあります。「原状回復のための修理」と「価値を高める改良」の線引きは難しいですが、工事の内容・金額・目的をしっかり記録に残し、判断に迷ったら税理士に確認する習慣が必要です。
礼金・更新料、「受け取った年」に計上していますか?
次に見落としやすいのが、礼金や更新料の計上タイミングです。
入居者から受け取った礼金や更新料は、受け取った年度に収益として計上するのが原則です。ところが「翌期の売上として処理した」「受け取り月ではなく年度をまたいで計上した」というケースが意外と多い。これが「期ずれ」と呼ばれる問題です。
数十万円の礼金でも、期をまたいで計上していれば修正申告の対象になります。特に3月・12月決算の法人は、年度末ぎりぎりに受け取った礼金の処理に要注意です。「金額が小さいから大丈夫」という認識は危険で、調査官は売掛金や前受金の明細を必ずチェックします。
法人と個人の間の家賃、相場より低すぎませんか?
3つ目は少し込み入った話ですが、法人とオーナー個人の間の賃貸関係です。
たとえば、オーナー個人が所有する物件を自分の法人に格安で貸しているケース。法人側は低い家賃を経費にできますが、実勢家賃と著しく乖離していると、税務署から「役員への経済的利益の供与」と認定されることがあります。その場合、法人では損金不算入、個人では給与課税という二重のダメージになることも。
「自分の物件だから好きな家賃でいい」という発想は、税務上は通じません。第三者間で成立するような適正な賃料の設定が求められます。顧問税理士と一緒に現在の賃料水準を確認しておくことをおすすめします。
「ちゃんとやっていたつもり」が一番危ない
この3つに共通しているのは、「きちんと処理していた」という認識のまま何年も続けてしまうパターンです。
修繕費の判断基準、収益計上のタイミング、関連当事者間の取引価格——いずれも細かいルールが絡んでいます。不動産賃貸業を法人で運営しているなら、年に一度は顧問税理士と一緒に帳簿を点検する機会を設けておきましょう。
税務調査は突然来ます。「知らなかった」では済まないのがつらいところ。今期の決算前に、この3点だけでも確認しておくことが、最大の追徴リスク対策になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。