「法人にしたのに、なんで税金がこんなに高いんですか?」

先日、創業5年目の社長からこんな相談を受けました。売上は順調に伸びているのに、手元に残るお金が増えない。原因を探ってみると、法人でしか使えないはずの経費が、ほとんど活用されていなかったのです。

実は、法人と個人事業主の間には、年間150万円もの「使える経費の差」があります。これを知っているかどうかで、毎年の手残りが大きく変わってきます。

法人だけが使える経費、あなたはいくつ知っていますか?

法人には個人では絶対に落とせない経費が20種類以上あります。代表的なものを挙げると、役員社宅、社用車、出張日当、法人保険、そして1人1万円以下の飲食交際費などです。

これらは「知っている人だけが得をする」世界です。顧問税理士から積極的に教えてもらえないケースも多く、毎年黙って損をしている社長が少なくありません。

年間150万円の差が、10年で450万円になる

経費の差が年間150万円あるとして、実効税率を約30%で計算すると、1年あたりの節税差は約45万円になります。これが10年続けば、約450万円の差です。

「たかが経費」と思っていたものが、10年スパンで見ると半額の高級車一台分の差になるわけです。法人格を持ちながら個人と同じ感覚で経費を扱っていると、この差はじわじわと積み上がっていきます。

特に見落とされがちな経費5選

相談を受けていて「これ、まだやってないんですか」と感じることの多い5つをご紹介します。

役員社宅 社長が住んでいる自宅を法人契約に切り替えると、家賃の大部分を法人経費にできます。月20万円の家賃なら、適切に設定すれば月15万円以上が経費化できるケースもあります。個人で払い続けている方は、今すぐ検討の価値があります。

出張日当 旅費規程を整備すれば、出張時に社長自身へ日当を支払えます。日当は給与ではないので所得税もかかりません。年に数十回出張があれば、これだけで数十万円の節税になります。

社用車 業務用途がメインであれば、車両本体から燃料費・保険料・車検費用まで丸ごと経費です。個人所有の車を使い続けている社長は、法人リースへの切り替えを一度試算してみてください。

法人保険 解約返戻金がある法人保険は、保険料の一部または全額を損金算入できます。退職金の積立と節税を同時に実現できる手段として、設計次第で大きな効果があります。

1人あたり1万円以下の飲食交際費 2024年度税制改正で、1人あたり1万円以下の飲食費は全額損金算入できるようになりました(改正前は5,000円以下)。取引先との食事代をきちんと経費処理できているか、今一度確認してみてください。

「経費で落とす」には実態が必要

ここで一点、重要な注意をお伝えします。経費計上には必ず実態が伴わなければなりません。

「名目だけ社用車にして実際はプライベート利用ばかり」「出張した事実がないのに日当を支払う」——こうした実態のない計上は、税務調査で否認されるだけでなく、重加算税の対象になるリスクもあります。

適法な節税と脱税の境界線は、「事業実態があるかどうか」です。制度を最大限に活用するためにも、実態の裏付けをきちんと残しておくことが大切です。

今期中にやっておきたいこと

まず確認してほしいのは、旅費規程の有無です。旅費規程がなければ出張日当は支払えません。作成自体はそれほど難しくなく、税理士に相談すれば数万円で整備できます。

次に、役員社宅と社用車について、現在の契約形態を見直してみてください。個人契約のままになっているなら、法人契約への切り替えが節税への近道です。

20個すべてを一度に整備する必要はありません。まずは自社に当てはまりそうなものから一つずつ確認していくのが現実的です。今期の決算前に、一度顧問税理士と「使えていない経費はないか」を棚卸ししてみることをおすすめします。旅費規程だけでも今期中に整備しておくと、来期から毎年の節税効果がじわじわ積み上がっていきますよ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。