先日、建設業を営むある社長からこんな連絡が届きました。「税務署から『お尋ね文書』というのが来たんだけど、これって何なの?」と。
その社長は毎年きっちり決算を組んでいましたし、個人でも複数の収益物件を持っていました。自分では問題ないと思っていた。でも、その文書が届いた瞬間、状況が少し変わってしまいました。
「お尋ね文書」は調査の一歩手前
「お尋ね文書」とは、税務署が納税者に送る任意の照会書類のことです。「任意」とはいっても、正式な税務調査が入る前の下調べ段階で送られてくるケースがほとんどです。
つまり、これが届いたということは、税務署はすでに何かを掴んでいると考えるのが自然です。返答の内容によっては「やはり調査に入る必要あり」と判断されることもあります。届いたらまず顧問税理士へ連絡するのが鉄則です。一人で対応しようとするのが、最も危険なパターンです。
なぜ不動産収入のある法人が狙われやすいのか
不動産収入がある法人への税務調査では、約30%のケースで申告漏れが発見されています。これは他業種と比べてもかなり高い割合です。
その背景には、税務署が使う「KSKシステム(国税総合管理システム)」があります。法務局の不動産登記情報と申告内容を自動的に照合できる仕組みで、「この法人は○○に不動産を持っているのに、収入が申告されていない」という矛盾をシステムが自動で検知します。
昔は調査官が手作業で突き合わせていましたが、今はシステムが自動でやってくれる。人の目を逃れることが、技術的にかなり難しい時代になっているのです。
特に多いのが「法人と個人の混在」
不動産収入の申告漏れで最もよく見られるのが、法人名義と個人名義の物件が混在しているケースです。
たとえば、社長個人が所有するアパートの家賃収入が法人口座に入金されていたり、逆に法人名義の物件の管理費を個人が負担していたり。こういった「ごちゃ混ぜ」状態が続くと、どちらで申告すべきかが曖昧になり、気づかないうちに抜け落ちが生じてしまいます。
悪意がなくても「気づいたら申告漏れになっていた」というパターンが非常に多い。これが30%という高い申告漏れ率につながっています。
ペナルティは思ったより重い
申告漏れが見つかった場合、追加の税金だけでは済みません。
通常の申告漏れには過少申告加算税として10〜15%が上乗せされます。さらに、意図的な隠蔽や虚偽の記載があったと判断された場合は、重加算税として35%が課されます。
たとえば500万円の申告漏れに重加算税が適用されれば、それだけで175万円が追加で課される計算です。延滞税も別途発生するため、最終的な負担は想定を大きく超えることがあります。「知らなかった」「うっかりだった」という事情は、残念ながらペナルティの免除にはなりません。
届く前にできることがある
一番大切なのは、「お尋ね文書が届く前に自分で確認しておく」ことです。
- 法人と個人の不動産収入が混在していないか
- 賃料収入が漏れなく申告されているか
- 修繕費・管理費の区分が正しく処理されているか
特に複数の物件を持つ社長なら、一度税理士と一緒に申告内容を棚卸しする機会をつくってみてください。KSKシステムが普及した今、不動産収入のある法人は以前より確実に「見られやすい」環境になっています。
「お尋ね文書が来てから動く」では遅いことがほとんどです。今のうちから申告内容を整理しておくことが、結果として一番の節税になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。