先日、年商3億円の建設会社を営む社長から、こんな連絡が来ました。「節税になると聞いて3年前から役員報酬を高めに設定していたんですが、税務調査で全額否認されてしまって。追徴税額が450万円を超えそうです」と。

声のトーンが暗かったのが印象的でした。脱税のつもりは一切なかった。正当な節税として信じていたからこそ、否認されたときのショックは大きい。

残念ながら、こういうケースは珍しくありません。役員報酬を活用した節税は、正しくやれば年間数十万〜数百万円の効果があります。でも「やってはいけない3つのパターン」にはまっていると、税務調査で否認されるリスクが跳ね上がります。

第3位:期中に報酬を変えてしまっている

役員報酬には「定期同額給与」というルールがあります。毎月同じ金額を支払い続けなければ、変更した差額分を損金として認めてもらえない、というものです。

たとえば、業績が好調だったので7月から役員報酬を月30万円増やしたとします。このタイミングでの変更は原則として認められません。差額の30万円×残り月数分が、まるごと損金不算入になってしまいます。

変更が許されるのは、事業年度の開始から3ヶ月以内だけです。期の途中でどれだけ業績が変わっても、勝手に金額を動かすと税務調査で必ず指摘されます。「経営判断で増やしたのだから当然の経費では」という感覚でいると、思わぬ否認につながります。

第2位:株主総会の議事録がない、または曖昧

税務調査官は「いつ、いくら決めたか、証拠を見せてください」と必ず確認します。役員報酬の金額は株主総会で決議されなければならず、その事実を証明する議事録が不可欠です。

よくあるのが「総会は開いているが議事録は適当に作っていた」「金額を変更したのに議事録に反映していない」「そもそも開催日時が記録されていない」といったケースです。

議事録に最低限必要なのは、開催日時・出席者・承認された報酬金額・決議の事実です。税務調査では3〜5年分を遡って確認されます。調査が始まってから慌てて議事録を作ろうとしても、日付や印鑑で後付けがバレることもある。書類の整備は「今期から」ではなく、遡れる範囲でしっかり固めておくことが大切です。

第1位:報酬が同業・同規模と比べて突出して高い

これが最も否認されやすく、かつ追徴税額が大きくなりやすいパターンです。

税務上、役員報酬が「不相当に高額」と判断されると、過大な部分が損金不算入になります。具体的には、同業種・同規模の会社の役員報酬と比較して著しく高い場合が対象です。

「自分の会社なのだから自分で金額を決めていい」というのは、半分正解で半分誤りです。たとえば年商5,000万円の会社で代表取締役に月200万円(年2,400万円)を支払っていて、同業の相場が月80万円(年960万円)程度だとすると、差額の1,440万円が否認対象になり得ます。さらに、法人で損金不算入になった上に個人でも課税されるという二重課税リスクも出てきます。

大切なのは「市場感覚から見て説明できる報酬かどうか」という視点です。同業の決算書や業界データを参考に、自社の規模・利益水準・社長の職務内容と照らし合わせて設定することが求められます。

「正しい手続き」が節税を守る

役員報酬を節税に活用すること自体は、何ら問題ありません。問題は手続きの正しさと金額の妥当性です。

今一度、以下の3点を確認してみてください。

  • 毎期の報酬改定は事業年度開始から3ヶ月以内に行っているか
  • 株主総会議事録に開催日時・出席者・承認金額を明記しているか
  • 報酬金額は同業他社と比較して説明できる水準か

どれか一つでも「曖昧かも」と感じるなら、今期の申告前に税理士に確認しておくことをおすすめします。税務調査は突然やってきます。調査官が来てから書類を整備しようとしても、間に合わないことがほとんどです。

役員報酬の設計は一度決めたら終わりではなく、毎年の業績・同業相場・会社の成長段階に合わせて見直す習慣をつけることが、長期的な節税効果と税務安全性の両立につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。