先日、年商3億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。

「毎年それなりに利益は出てるんですが、税金と社会保険料でごっそり持っていかれて……。なにか手はないですか?」

話を聞いてみると、役員報酬の設定はしているものの、不動産を絡めた節税策はまったく手をつけていない状態でした。これは正直、もったいないんです。役員報酬と不動産を組み合わせることで、合法的に年間数百万円の税負担を減らせる手法が、実は複数あります。

今回は、その中でも特に効果が大きい3手法をご紹介します。

法人社宅で「報酬を下げながら手取りを守る」

まず3位は、法人社宅制度の活用です。

これは、役員報酬を月20万円ほど下げる代わりに、会社が社宅を用意して居住させる仕組みです。「報酬が減るなら手取りも減るんじゃ?」と思われるかもしれませんが、実際は逆のことが起きます。

役員報酬が下がると、所得税と社会保険料の計算のベースが小さくなります。一方、社宅の自己負担額は国税庁が定めた計算式(固定資産税の課税標準額をもとに算出)によって決まり、実際の家賃よりもかなり安く設定されることが多いんです。

ケースによっては、この仕組みだけで年間40万円以上の税・社保の削減につながることもあります。住居費を会社経費として落としながら、個人の手取りはほぼ変わらない——これが法人社宅の本質です。

注意点は、社宅として認められるには会社名義での契約が必要で、役員が勝手に賃貸契約した物件を後から社宅にすることはできません。これから引っ越しを考えているタイミング、あるいは法人で物件を購入するタイミングが、導入の絶好のチャンスです。

築古物件の「4年償却」で法人税を一気に圧縮する

2位は、中古不動産の短期減価償却です。こちらは知っている社長でも、実際に活用できていないケースが多い手法です。

建物の耐用年数は構造ごとに決まっており、木造は22年です。ただし、中古物件の場合は「簡便法」という計算方式が使えて、築25年を超えた木造物件なら耐用年数がわずか4年になります。

1,000万円で購入した物件なら、毎年250万円を経費(減価償却費)として計上できる計算です。法人税率を30%とすれば、4年間で約300万円の税額を圧縮できる可能性があります。

重要なのは、これはあくまで「タイミングの前倒し」であって、物件を売却するときに売却益として課税が発生します。ただし、償却が終わった後に売却するタイミングを調整したり、退職金と組み合わせて法人の利益をコントロールしたりすることで、トータルでの税負担を最小化することができます。

短期間に大きな経費を落としたい、今期の利益が膨らみすぎている——そういう局面で特に効果を発揮します。

「退職金×不動産」の組み合わせが最強の理由

1位は、役員退職金と法人不動産の組み合わせ戦略です。

退職金は、給与と比べて税制上の優遇が非常に手厚い所得です。退職所得控除(勤続年数に応じて最大数千万円が非課税)があり、さらに控除後の金額を2分の1にして課税する仕組みになっています。つまり、同じ1,000万円でも給与で受け取るか退職金で受け取るかで、税負担が劇的に変わります。

ここに法人不動産を絡めると、さらに強力になります。

法人が不動産を保有しながら収益を積み上げ、役員退職のタイミングで退職金として支払う。不動産収益という形で法人内に利益を溜め込みつつ、最終的に退職金という最も税率の低い形で個人に移す——この設計ができると、数百万円規模の節税が現実的に射程に入ってきます。

ただし、退職金の「適正額」は税務上のルールがあり、過大な退職金は損金として認められないリスクがあります。在任期間・報酬額・会社規模などをもとに算定するため、早めに税理士と設計しておくことが大切です。


役員報酬と不動産の組み合わせは、一つひとつの手法はシンプルでも、組み合わせ方や実行タイミングによって効果が大きく変わります。まだ手をつけていない方は、今期の決算が終わったタイミングで、ぜひ税理士と一度棚卸しをしてみてください。「知らなかった」で損するには、あまりにも惜しい金額です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。