先日、年商3億の建設会社を経営する社長から、こんな相談が届きました。
「毎月300万の役員報酬をもらっているのに、手元に残るのが半分以下なんです。こんなに税金が重いものなんでしょうか」
この感覚、正直です。役員報酬が高くなるほど、所得税・住民税・社会保険料の三重負担が重なり、実効税率が50%近くに達することがあります。月300万なら、年間で約1,800万が税と保険料に消えている計算になります。
「報酬を上げれば豊かになる」は本当か
多くの社長は「役員報酬を増やせば手取りが増える」と思っています。でも実際には、報酬が増えるほど課税される割合も高くなる仕組みになっています。
所得税は最高税率45%、そこに住民税10%が乗り、健康保険・厚生年金の保険料まで加わると、実効的な負担率は50%を優に超えます。ある水準を超えると、報酬を100万増やしても手取りは40〜45万しか増えない、という「役員報酬の天井」が存在するのです。
この構造に気づかないまま、毎年同じ設計を繰り返している社長は少なくありません。
カギは「給与以外の報酬設計」にある
税負担を減らす正攻法は、課税所得そのものをコントロールすることです。現金の報酬を減らしながら、実質的な生活水準を維持できる仕組みがいくつかあります。
まず役員社宅制度です。会社が物件を借り上げ、社長に転貸する形を取ると、個人が負担する家賃は市場価格の20〜30%程度で済むことがあります。残りは会社の経費になり、個人の課税所得には含まれません。月30万の家賃なら、月20万以上が課税対象から外れる可能性があります。年間換算で240万以上の効果です。
次に社用車の活用。通勤・業務で使う車を会社名義で購入またはリースし、経費として計上する方法です。車両本体だけでなく、ガソリン代・保険料・整備費も会社の経費になります。年間200〜400万の支出が、個人の手取りではなく会社の損金に変わります。
さらに出張日当規程の整備も見落とされがちです。会社規程に基づいて支給する日当は、実費精算ではなく一定額を非課税で受け取れます。月に数回出張がある社長なら、年間50〜100万の非課税支給が可能になることもあります。
組み合わせると、実効税率が10〜20ポイント変わる
個別に見ると「少し節税になる」程度に感じるかもしれません。でも、これらを正しく組み合わせると話が変わります。
役員社宅で課税所得を月20万削減、社用車で年間300万を経費化、日当規程で月5万を非課税支給——こうした設計を積み重ねると、実効税率が50%近くから30%台に下がるケースがあります。年収3,600万の社長なら、実効税率が15ポイント下がるだけで手取りが年540万増える計算です。「年800万増」というのも、決して大げさな数字ではありません。
「形式だけ整えた節税」は税務署に見透かされる
注意しなければならないのは、これらの制度は実態が伴わなければ否認されるという点です。
役員社宅であれば、実際にそこに居住していること、賃料の算定が法令に基づいていること、契約書・振込記録が整っていること——これらが揃っていないと、税務調査で「給与として課税すべきもの」と判断されます。後から追徴課税に加算税がセットでやってくる、という最悪の結果になることも。
社用車も同様で、業務使用の実績記録がなければ全額プライベート使用とみなされるリスクがあります。「設計する」だけでなく、「日々の運用で証拠を積み上げること」が節税の大前提です。
今期中に確認してほしいこと
役員報酬の設計は、期が始まってからでは変更が難しい場合があります。事業年度の途中で報酬額を変更すると「定期同額給与」のルールを外れ、損金算入できなくなるからです。
今からできることは、まず現在の実効税率を計算すること。次に役員社宅・社用車・日当規程が整備されているかを確認することです。どれか一つでも整っていないなら、次の期首に向けて税理士と設計を見直すタイミングが来ています。
「報酬額を上げる」という発想から、「課税所得をコントロールして手取りを最大化する」という発想への転換を、ぜひ今期中に検討してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。