先日、ある社長からこんな相談を受けました。「6月に自分に100万円の賞与を出したんですが、手元に届いたのは50万円ちょっとでした。半分はどこへ消えたんですか?」

この疑問、実はとても本質的なことを突いています。賞与に課せられる税負担は、多くの社長が想像している以上に重いのです。

賞与から消える「3つのコスト」

賞与を受け取ると、いくつもの負担が一気にのしかかってきます。

まず所得税。賞与の場合、前月の給与をもとに税率を計算する独自の算出方法が使われます。高所得の役員であれば、この段階だけで20〜30%以上が消えることも珍しくありません。

次に住民税。翌年6月から分割納付となりますが、賞与分もしっかり翌年の課税対象に入ります。所得税と合算すると、税率は軽く30%を超えてきます。

そして見落としがちなのが社会保険料です。健康保険・介護保険・厚生年金を合わせた本人負担は約15%。さらに法人が負担する事業主分も約15%あります。会社のお金ベースで考えると、賞与1円を支払うたびに社会保険料が上乗せされる計算です。

結果として、賞与100万円を支払った場合、社長の手元に残るのは約50万円。残りの50万円は税と保険料として消えてしまいます。

「報酬を増やす」だけでは損をする理由

「もっと節税したいなら、役員報酬をもっと増やせばいい」と思う方もいるかもしれません。しかし、それは逆効果になりやすいのです。

役員報酬を増やせば増やすほど、個人の所得税率は上がります。日本の所得税は累進課税ですから、年収2,000万円を超えるあたりから税率45%の世界に突入します。住民税の10%を加えると最高税率は55%。稼いでも稼いでも半分以上が消えていく構造です。

これに対して法人の実効税率はどうかというと、所得800万円超の部分でも**約34%**です。同じ100万円の利益でも、個人で受け取るより法人に残したほうが手元に残る金額がはるかに大きくなります。

法人節税の本命は「築古不動産の減価償却」

では、法人の課税所得を合法的に減らすにはどうすればいいか。資産規模がある程度ある社長に特に有効なのが築古不動産の活用です。

築年数が経過した木造物件(たとえば築25年超の木造アパート)は、税務上の耐用年数が短く設定されています。この物件を法人で取得すると、取得価額を4〜5年という短期間で減価償却費として計上できます。

たとえば法人で2,000万円の築古木造物件を取得した場合、年間400〜500万円の減価償却費を計上できます。これが課税所得から丸ごと引かれますから、実効税率34%で計算すると年間130〜170万円程度の節税効果が生まれます。賞与を増やして50%課税を受けるより、法人の課税所得を先に減らす——この順序が大事なのです。

活用できる条件と注意点

もちろん、不動産にはリスクもあります。空室リスク、修繕費、流動性の低さ。これらは無視できません。

重要なのは「節税しながら資産を持つ」という発想は、本業の収益が前提だという点です。赤字法人や課税所得が少ない法人が節税目的で不動産を購入しても、減価償却費を活かせるキャパシティがなければ意味がありません。目安としては、法人の年間課税所得が800万円以上ある段階から検討する価値が出てきます。

6月は「税を意識するチャンス」

6月は住民税の特別徴収が切り替わるタイミングでもあり、社長・従業員ともに税への意識が高まる季節です。賞与を支払う前に、まず「法人の課税所得をどこまで下げられるか」を税理士と一緒に考えてみてください。

減価償却以外にも、小規模企業共済や倒産防止共済、役員退職金の積み立てなど、手法はいくつもあります。「賞与を出すより先に、法人節税の設計を整える」——この発想の転換だけで、数百万円単位の差が生まれることがあります。

まだ具体的な節税対策を打っていないなら、今期中に税理士との作戦会議を設定しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。