先日、年商10億円の建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。「役員報酬を2,000万円から3,000万円に上げたいんだけど、税金と社会保険でほとんど消えるって聞いて……。実際どうなんですか?」

正直に言います。その心配は当たっています。

稼いだ半分が消える、役員報酬の実態

役員報酬が年2,000万円を超えてくると、所得税・住民税・社会保険料を合わせた実効負担率は50%を超えることがあります。つまり1,000万円増やしても、手元に残るのは500万円以下ということです。

「それなら、もう少し違うやり方があるんじゃないか」と考えるのは自然なことです。そこで注目されているのが、法人での不動産購入という選択肢です。

法人で不動産を買うと、なぜ節税になるのか

法人が不動産を購入すると、建物部分については減価償却費を毎年の経費として計上できます。たとえば5,000万円の建物を耐用年数40年の構造で取得した場合、毎年125万円の減価償却費が法人の帳簿に乗ります。

これが法人の利益を圧縮し、法人税の課税対象を減らします。

さらに重要なのが、法人税率と個人の実効税率の差です。法人の実効税率は概ね25〜35%の範囲に収まることが多い一方、役員報酬として個人に渡すと50%超の税負担になるケースがあります。この差が、年間の手取り額に直接響いてきます。

役員報酬の最適化と組み合わせると、差がさらに広がる

不動産の減価償却費を活用しながら役員報酬の水準を見直すと、手取りの最適解が変わってきます。

具体的なイメージをお伝えすると、法人利益が年5,000万円ある会社で不動産購入による減価償却費が年300万円あるとします。この300万円が法人税の課税ベースから外れることで、法人税の節税額は75万〜100万円程度。一方で同じ金額を役員報酬として受け取った場合の税負担は150万円前後になることもあります。

この差が積み重なり、複数の物件・複数年で設計を組み立てていくと、「年500万円規模の差」という数字が現実味を帯びてきます。

社会保険料の視点も、忘れずに

役員報酬の最適化を考えるとき、見落とされがちなのが社会保険料の影響です。役員報酬が高いほど社会保険料も増加しますが、あるラインを超えると保険料が頭打ちになる仕組みがあります。

このボーダーラインを意識した報酬設計をするだけで、手取りが数十万単位で変わることもあります。不動産の活用と組み合わせると、さらにトータルの最適解が広がります。

「買えばいい」というほど、単純ではない

ここまで読んで「じゃあ不動産を買えばいいんだ」と思った方、少し待ってください。

法人での不動産購入には、いくつかの落とし穴があります。物件の選定を誤ると資産価値が落ち、節税どころかキャッシュが出ていくだけになります。融資を使う場合は金融機関の審査や借入コストも考慮が必要です。そして出口(売却時)の税負担まで含めたシミュレーションが不可欠です。

「節税額だけを見て買い」と判断するのは危険です。キャッシュフロー・融資・出口戦略まで含めたトータル設計があってはじめて、この手法は機能します。

まず「今の報酬設計が最適かどうか」を確認するところから

法人の利益水準・役員報酬の設定・社会保険料の負担——この3点を整理してみると、見直しの余地があるかどうかが見えてきます。

役員報酬を上げても手取りが増えない、と感じているなら、報酬設計の組み直しタイミングかもしれません。決算期の3〜6ヶ月前に動き始めるのが理想です。今期の着地が見えてきたら、早めに税理士に相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。