毎年6月になると、住民税の決定通知書が届きます。「去年よりまた増えた…」と感じる社長も多いのではないでしょうか。
先日、年商3億円の建設業を営む社長からこんな相談を受けました。「住民税の通知書を見たら、去年より30万円も増えていた。どうにかならないか」と。実は、役員報酬の設定を見直すだけで、住民税だけでなく所得税・社会保険料もまとめて最適化できるケースがあります。しかも、タイミングを間違えると1年待ちになるという落とし穴もあって、これを知らずに損している社長が意外と多いんです。
住民税は「昨年の稼ぎ」に対する請求書
住民税の税率は全国一律10%です。シンプルに見えますが、この「10%」が曲者で、役員報酬が高くなるほど金額がじわじわ膨らみます。
しかも重要なのが課税のタイミング。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、6月に届く通知書は「去年1年間の稼ぎに対する請求書」です。今年どれだけ節税しても、来年6月まで効果が出てこない。だからこそ、早めに手を打つことが重要になります。
たとえば役員報酬が年収1,500万円だとします。住民税だけで単純計算すると150万円前後。そこに所得税と社会保険料が加わると、手取りは想像以上に少なくなります。
役員報酬の「最適解」は人によって違う
「報酬を下げれば節税になる」というのは半分正解で、半分は違います。
役員報酬を下げると所得税・住民税は減りますが、社会保険料の計算方法も変わります。一方で報酬が低すぎると、会社の利益が増えて法人税が増える。最適なバランスは、会社の利益水準や個人の生活費、社会保険の加入状況によって変わってきます。
年収1,200万円台の社長であれば、報酬の設定を見直すことで年間数十万円の節税になるケースが実際にあります。ただし「いくらにすれば一番得か」は、シミュレーションをしてみないとわかりません。数字は具体的に出してみることで初めて選択肢が見えてきます。
変更できるのは「期首から3ヶ月以内」だけ
ここが最大の注意点です。役員報酬の改定は、いつでも自由にできるわけではありません。
税務上、役員報酬が損金(会社の経費)として認められるためには、原則として期首から3ヶ月以内に改定する必要があります。この期限を超えてしまうと、変更分が損金として認められず、実質的に1年待たなければならなくなります。
3月決算の会社なら、6月末までが変更の期限。まさに今、住民税の通知書が届くこの時期と重なっているんです。「通知書を見て驚いた→そのまま1年放置」というパターンが非常に多いので、届いたときが検討のベストタイミングです。
変更のルールを補足しておくと、中小企業の社長が主に使うのは次の2つです。
- 定期同額給与:毎月同額を支払う基本形。年度途中で変更すると損金不算入リスクがある
- 事前確定届出給与:いわゆる役員賞与。事前に税務署へ届け出た金額・時期を守れば損金算入できる
「いつ、いくら払う」を決めてから動く、というのが役員報酬の鉄則です。
「来期からにしよう」が一番もったいない
社長業は忙しいので、こういった話は「わかった、来期からやる」と後回しになりがちです。でも役員報酬の見直しは、今この瞬間が一番やりやすい。
なぜなら6月は住民税の通知が来るタイミングであり、まだ期限内に間に合う会社も少なくないからです。4月・5月・6月決算の会社は特に要注意です。3月決算の会社でも、来期に向けた報酬設計を今から税理士と相談しておくことで、次の期の損金算入タイミングを余裕を持って押さえられます。
税理士への相談を「通知書が届いたこの週」にやる習慣をつけるだけで、節税のタイミングを逃すことがなくなります。住民税の通知書が届いたら、捨てる前にひと呼吸おいて、自分の役員報酬の設定を思い返してみてください。それだけで、年間数十万円の差が生まれる可能性があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。