「うちは利益が出るたびに税金を持っていかれるんですが、もう少し対策できませんか?」

先日、年商2億ほどの卸売業の社長からこんな相談を受けました。決算書を拝見すると、役員報酬は「なんとなく」の金額で設定されており、不動産は個人名義のまま、小規模企業共済もiDeCoも未加入という状況でした。

つまり、使えるはずの節税の武器が3本とも手つかずだったんです。試算してみると、最適化することで年間400〜500万円の節税余地がありました。「知らなかっただけで、毎年これだけ損してきたんですか」と社長も絶句していました。

役員報酬を「ちょうどいい金額」に調整する

役員報酬は毎年自由に変えられるわけではありませんが、期首に一度だけ設定する機会があります。この金額を何となく決めている社長が本当に多いのですが、実はここが節税の最重要ポイントです。

報酬が高すぎると所得税と社会保険料が膨らみ、低すぎると法人側に利益が残りすぎて法人税が増える。この「ちょうどいい金額」を見つけるだけで、個人と法人を合わせたトータルの税負担が年100万円単位で変わってくるんです。

社会保険料は報酬額に連動するため、意外と見落とされがちです。月額報酬が数万円違うだけで、年間の社会保険料総額(会社負担込み)が50万円以上変わるケースもあります。損得分岐点を一度きちんと試算しておく価値は十分あります。

法人名義で不動産を持つと「建物が丸ごと経費になる」

次の柱が不動産です。個人で不動産投資をしている社長も多いのですが、法人で持つと節税効果がまったく変わってきます。

特に効果的なのが、減価償却の活用です。たとえばRC造の1棟マンションを法人で購入した場合、建物部分を毎年100万円単位で減価償却費として経費計上できます。実際の現金支出はないのに、帳簿上の利益が圧縮される仕組みです。

法人税の実効税率は約30〜35%ですので、100万円の減価償却費があれば30〜35万円の法人税が減ります。物件の規模にもよりますが、複数棟持てばその効果は何百万円にもなります。また、社宅制度と組み合わせることで、役員の住居コストを法人経費に落とすこともできます。

ただし、物件の選び方や購入スキームを間違えると、節税どころか税務リスクになることもあります。不動産購入は金額も大きいので、必ず専門家と事前に設計することが大切です。

小規模企業共済+iDeCoで「老後の準備が全額控除」になる

3つ目の柱は、小規模企業共済とiDeCoの組み合わせです。どちらも「積み立てた金額が全額、所得控除になる」という非常に強力な制度です。

小規模企業共済は、中小企業の経営者や役員が加入できる退職金積み立て制度です。月額最大7万円、年間84万円まで掛けられ、その全額が所得控除になります。iDeCoも役員であれば月額2万3,000円(年間約27万6,000円)まで掛けられ、やはり全額所得控除です。

2つ合わせると、年間111万円超が所得から差し引かれます。所得税率が33%の方なら、それだけで年間36万円以上の節税になる計算です。さらにこれらは「積み立て」なので、将来の退職金や老後資金にもなる。節税しながら老後の備えもできる、まさに一石二鳥の制度です。

3つを重ねると、何が起きるか

役員報酬の最適化で年100〜150万円、法人不動産の減価償却で年100〜200万円(物件規模による)、小規模企業共済+iDeCoで年30〜50万円。この3つを組み合わせると、試算上は年間400〜500万円の節税効果が見込めます。

もちろん、会社の規模や状況によってシミュレーション結果は変わります。「自分の会社ではどれくらい効果があるのか」は個別に計算しないとわかりません。ただ、確実に言えることは一つ——何もしなければゼロだということです。

まだ役員報酬を「なんとなく」の金額で設定しているなら、今期の改定タイミングに向けて試算を始めることをおすすめします。iDeCoや小規模企業共済も「いつかやろう」では節税チャンスが毎年消えていきます。動き出すなら早いほど有利です。今期の決算を前に、一度税理士に3つまとめて相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。