先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「今期は業績が良かったから、自分へのボーナスを500万円出したい。でも、なんか税金がすごく高くなった気がして……」
試算してみると、手元に残ったのは230万円ほど。500万円を渡したのに、270万円が税金として消えていたのです。
なぜ役員ボーナスはここまで重税になるのか
一般の従業員であれば、ボーナスは会社の経費として処理でき、法人税の課税対象から外れます。ところが役員は違います。
届出のない役員賞与は、税法上「損金不算入」——つまり法人の経費として認められません。会社が法人税をフルに払った後の利益から支給することになるため、そこに個人の所得税・住民税がさらにのしかかってくる。この「二重課税」の構造が、実質的な税負担率を50%超に押し上げてしまうのです。
500万円の賞与に270万円の税金というのも、決して大げさな話ではありません。
「事前確定届出給与」が解決策になる理由
この問題を合法的にクリアする手段が「事前確定届出給与」という制度です。名前は難しそうですが、やることはシンプル。
株主総会後1ヶ月以内に、税務署へ所定の届出を出すだけです。
届出には「いつ、いくら払う」という賞与の予定を記載します。これを事前に申告しておくことで、役員賞与が正式に会社の経費として認められるようになります。法人税が下がる分、実質的な手取りが大きく改善されるわけです。
税務署の窓口では、こちらから聞かない限りまず教えてくれません。知っているか知らないかで、数十万〜数百万円の差が生まれる制度です。
絶対に間違えてはいけない「1円・1日ルール」
ただし、この制度にはきわめて厳格な条件があります。
届出た金額と支払日を、1円でも1日でも変えると全額が否認されます。
「今期の利益が思ったより少なかったから、賞与を100万円減らそう」——この判断が命取りになります。払わなかった場合も同様です。届出通りに実行しなければ、法人の経費として認められなくなるのです。
事前確定届出給与が否認された事例の多くは、業績変動に合わせて金額を調整しようとしたケースです。届出はあくまで「約束」。その約束を守れるかどうか、支払い前に慎重に見極める必要があります。
活用のポイントを整理すると
- 届出のタイミングは株主総会後1ヶ月以内(決算後ではなく、総会後カウント)
- 金額・支払日ともに届出通りに実行することが絶対条件
- 業績が読みにくい年は、少し保守的な金額設定にしておくほうが安全
- 定期同額の役員報酬とは別に、賞与として設計できる
金額の設定は慎重さが必要ですが、毎期の業績見通しと照らし合わせながら計画的に組み立てれば、法人の節税と個人の手取り改善を同時に実現できます。
まだ届出を出したことがない社長へ
今期の業績が良かった社長ほど、このタイミングで動く価値があります。株主総会の後1ヶ月という期限は思ったより早く来ます。顧問税理士に「事前確定届出給与を活用したい」と早めに相談しておくことをおすすめします。
一度仕組みを組んでしまえば、毎期の届出は数枚の書類で済みます。知っているだけで何百万円も手元に残せる制度——まだ使っていないなら、今期こそ取り入れてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。