先日、都内で飲食業を展開している社長からこんな相談を受けました。

「税理士に節税のために不動産を買えと言われて、区分マンションを1億円で買ったんですよ。でも友人の社長は同じくらいの金額で一棟アパートを買って、節税額が全然違うって言うんです。なんでですか?」

この質問、実はとても本質的なんです。不動産投資で節税を考えるとき、「いくらの物件を買うか」だけを見ていると、大きな差を見逃してしまいます。大事なのは「何を買うか」です。

節税の肝は「建物の比率」にある

不動産投資で節税になる仕組みは、ざっくり言うと「建物部分を毎年少しずつ経費にできる」というものです。これが減価償却と呼ばれる仕組みで、実際にお金は出ていかないのに帳簿上は経費として計上できる、社長にとってはありがたい制度です。

ポイントは、土地は減価償却できないという点です。土地はいつまでも土地のまま価値が残るので、経費にはなりません。減価償却できるのはあくまで「建物」だけ。つまり、同じ1億円の物件でも「建物の比率が高いほど節税効果が大きい」ということになります。

ここに、区分マンションと一棟木造アパートの決定的な違いがあります。

区分マンションで1億円を使うと…

都心の区分マンションは、価格の多くが「土地の持ち分」に乗っかっています。タワーマンションの一室を買ったとしても、土地は全住戸で分け合うわけですから、建物への割り当ては想像以上に少ない。

結果として、1億円の区分マンションで毎年経費にできる減価償却費は、おおよそ50万〜80万円程度にとどまることが多いです。法人税率を30%と仮定すると、年間の節税効果は15万〜24万円ほど。1億円を使って年間20万円の節税、と聞くとちょっと物足りなく感じませんか?

一棟木造アパートなら話が変わる

一方、郊外や地方の一棟木造アパートはどうでしょう。土地の価格が低く、建物の比率が物件価格の大部分を占めます。さらに木造の法定耐用年数は22年と短めに設定されているため、建物価格を短期間で経費に落とせるという特徴があります。

同じ1億円でも、木造アパートなら年間の減価償却費が300万〜400万円に達することも珍しくありません。法人税率30%で計算すると、年間90万〜120万円の節税効果。区分マンションと比べると、実に3倍以上の差が出ることになります。

10年間持ち続けたとして、この差は累計で1,000万円近くになることも。同じ「1億円の不動産投資」でも、中身次第でここまで結果が変わってくるんです。

ただし「買えばいい」わけでもない

ここまで読むと「じゃあ木造アパートを買えばOKだ」と思いたくなりますが、少し待ってください。節税目的で不動産を購入するとき、スキームを間違えると逆効果になるケースが実際にあります。

たとえば、個人名義で購入してしまうと、所得税の税率が高い場合には法人で持つよりも節税効果が薄れます。また、減価償却が終わった後に物件を売却するタイミングや、売却時の税率をあらかじめ見込んでおかないと、「節税したつもりが、売ったときに一気に課税された」という事態にもなりかねません。

収益性と節税効果のバランス、法人スキームの組み方、出口戦略まで含めて設計することが不可欠です。

「試算してから動く」が鉄則

節税目的で不動産を購入する場合は、必ず税理士と一緒に事前の数字を確認してください。物件の種別、土地建物の割合、法人か個人か、売却時のシミュレーションまで、すべてを並べて比較することが重要です。

「いい物件が見つかったから先に契約した」という話をよく聞くのですが、買ってからでは修正が効かない部分も多い。動く前に試算を、というのが節税不動産の大原則です。

1億円の使い方で年間100万円近く手元に残るお金が変わるとしたら、その検討に数時間かけるのは決して損ではないはずです。もし今期の利益が大きく出る見込みなら、早めに税理士に相談してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。