先日、都内で会社を経営されている社長からこんな相談を受けました。「節税目的でタワマンの区分を買ったんですが、思ったより税金が減らなくて…」。話を聞いてみると、物件選びの段階で大事なことを見落としていたことが分かりました。
不動産投資で節税を考えるとき、「区分マンション」を選ぶ社長は少なくありません。手軽に始められて管理も楽そう、というイメージがあるからでしょう。ただ、純粋な節税効果という観点でいうと、一棟アパートとのあいだに無視できない差があります。その差は、条件によっては3倍近くになることもあるのです。
節税の肝は「減価償却費」をどれだけ作れるか
不動産投資で節税できる仕組みを一言でいうと、「減価償却費を経費として計上することで、帳簿上の利益を圧縮できる」ということです。
減価償却とは、建物の取得費用を耐用年数にわたって少しずつ経費に落としていく制度です。ポイントは「実際にお金は出ていかないのに、経費になる」こと。これが節税の核心です。
木造アパートの場合、法定耐用年数は22年。1億円の木造一棟アパートを購入した場合、建物部分を定額法で償却すると、年間でおよそ450万円前後を経費として計上できます(建物比率や取得費用の内訳によって変動します)。
区分マンションで節税が伸び悩む本当の理由
では、なぜ区分マンションだと節税効果が薄くなりやすいのか。理由はシンプルで、「建物に割り当てられる価格の比率が低い」からです。
マンションの一室を購入するとき、支払った金額の内訳は「土地持分 + 建物持分」に分かれます。都心のタワーマンションや人気エリアの物件ほど、土地の価格が高騰しているため、建物に割り当てられる割合が相対的に小さくなりがちです。
減価償却の対象はあくまで「建物」だけです。土地はいくら高くても経費になりません。つまり、同じ1億円を使っても、区分マンションでは建物に帰属する価格が3,000〜4,000万円程度にとどまるケースもあり、一棟アパートに比べて年間の経費計上額が半分以下になることも珍しくないのです。
相続税でも「一棟」に軍配が上がる理由
節税の話は所得税・法人税だけではありません。相続税対策という視点でも、一棟アパートには強みがあります。
一棟アパートは土地を丸ごと所有するため、「貸家建付地」として相続税評価額が下がります。さらに土地面積が大きい分、小規模宅地等の特例(最大80%減額)が使えるケースも出てきます。区分マンションの場合、所有する土地は全体の「持分の一部」にすぎないため、この恩恵を十分に受けにくい構造になっています。
資産を次の世代に残すことを考えている経営者であれば、所得税の節税だけでなく、相続時の評価圧縮効果も含めて比較することが大切です。
「じゃあ一棟アパートを買えばいい」は早計です
ここまで読むと「すぐに一棟アパートを買おう」と思うかもしれません。ただ、いくつか押さえておきたい注意点があります。
まず、減価償却の効果は永続しません。耐用年数を過ぎれば経費計上が終わり、その後は家賃収入がそのまま課税対象になります。節税目的で物件を購入した場合、数年後に逆に税負担が増えるケースもあるのです。
また、一棟アパートは購入価格も大きく、空室リスクや修繕コストも区分に比べて集中します。節税額だけを見て飛びつくと、トータルのキャッシュフローで損をすることもあります。
物件の築年数・構造・立地・建物比率・現在の所得水準…これらが組み合わさって初めて「どちらが有利か」が決まります。一般論で語れる部分はあくまで入口にすぎません。
不動産投資を節税に使うなら、買う前に設計する
節税効果の高い不動産投資を実現するためのポイントをまとめると、こうなります。
- 建物比率が高い物件を選ぶ(木造・築古ほど有利になりやすい)
- 耐用年数が短いほど、短期間で大きく経費計上できる
- 相続も見据えるなら、土地面積と評価圧縮効果まで試算する
- 出口戦略(売却時の税負担)まで含めてシミュレーションする
大切なのは、物件を買った後に「節税できた・できなかった」と判明するのではなく、買う前の段階で数字を設計しておくことです。
不動産を使った節税は、正しく使えば非常に強力なツールです。しかし、物件タイプの選択を間違えると、思ったような効果が得られないどころか、後になって後悔することにもなりかねません。
今期の利益が大きく出そうで不動産投資を検討しているなら、まず信頼できる税理士に「どんな物件なら自分の状況に合うか」を相談することを強くおすすめします。決算を目の前にしてから動いても、間に合わないことがほとんどです。早めに動いておいて損はありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。