先日、都内で製造業を営む社長からこんな相談を受けました。
「顧問の税理士から『地方の高利回り物件を買えば節税になる』と聞いていたのに、3年経ったら逆に税金が増えてしまった」と。
話を聞いてみると、原因はすぐにわかりました。物件の「利回り」だけを見て、税務上の出口まで考えていなかったのです。
高利回り物件が「節税の罠」になるとき
地方の築古物件は、利回り8〜12%というケースも珍しくありません。家賃収入がたっぷり入ってくる。一見、法人にとっておいしい話に見えます。
ところが、家賃収入が多いということは、課税所得もそれだけ増えるということです。
購入当初は減価償却費が大きく、収益を圧縮できます。でも築古物件は耐用年数が短く、減価償却が3〜5年で終わってしまうことも多い。その後はどうなるか。家賃収入がそのまま丸ごと益金として計上され、毎年の法人税がじわじわ増えていくのです。
「節税のために買ったのに、なぜ税金が増えるんだ」という社長の気持ち、痛いほどわかります。
都心の低利回り物件が「大型節税」に化ける理由
一方、都心の物件は利回り3〜4%が相場です。正直、毎年の収益インパクトは地方物件に比べると地味です。
でも、都心物件には別の武器があります。それが「含み益」です。
都心の不動産は価格が下がりにくく、10年後に売却するときに大きな売却益が出やすい。この売却タイミングを「役員退職金」と組み合わせると、節税効果が一気に跳ね上がります。
具体的なイメージをお伝えします。たとえば、社長が65歳で引退するタイミングに合わせて物件を売却する。役員退職金は損金算入できるため、売却益と退職金の支出がぶつかり合い、その年の課税所得を大幅に圧縮できます。実効税率が通常の30%超から、10%台まで下がるケースも実際にあります。
毎年の節税は小さくても、出口で「一気回収」できる。それが都心物件の本質的な強みです。
「毎年の節税」と「将来の大型節税」、どちらを選ぶか
ここで重要なのは、どちらが正解かという話ではない、ということです。
会社のフェーズによって、正解は変わります。
たとえば、今まさに利益が出すぎていて今期の法人税を何とかしたいなら、減価償却が大きく取れる地方の築古物件が効果的な場面もあります。
一方、会社が安定成長フェーズに入っていて、社長の引退が10〜15年後に見えてきているなら、都心物件を仕込んで含み益を育てながら出口戦略を描く方が合理的です。
両方を組み合わせるという選択肢もあります。地方物件で足元の節税をしながら、都心物件で将来の大型節税を準備する。ポートフォリオ的な考え方です。
数字だけ見て動くと、あとで後悔する
不動産投資の失敗談で多いのは、「利回り」という一つの数字だけを見て購入を決めてしまうパターンです。
税務の世界では、買った瞬間より「持ち続けた後」「売った後」の方が重要だったりします。減価償却が終わった後に税負担がどう変わるか、売却時に課税所得がどうなるか、退職金の支給タイミングと合わせられるか。これらを事前にシミュレーションしているかどうかで、10年後の手残りが数千万円単位で変わってきます。
今の自社のフェーズを、もう一度確認してほしい
「うちは毎期1億円以上の利益が出ているのに、ずっと地方の高利回り物件ばかり買い続けている」という社長は、一度立ち止まって考えてみてください。
減価償却が終わった物件が増えていないか。毎年の益金が積み上がっていないか。出口戦略を描いた上で購入しているか。
不動産はいい節税ツールになりえますが、戦略なしに動くと逆効果になります。地方か都心か、その選択の前に「自社は今どのフェーズにいるか」を税理士と一緒に整理するところから始めてみてください。
買うタイミングよりも、どう売り抜けるかを先に考える。これが、節税上手な社長に共通するスタンスです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。