先日、年商3億円の製造業の社長から、こんな質問を受けました。「不動産投資をするなら、個人と法人どっちが得ですか?」
答えは状況によって変わりますが、法人購入には個人では使いにくい経費のルートがいくつもあります。中でも驚かれるのが、初年度だけで350万円以上が経費になりうるという事実です。
「そんなに?」と思う方もいるかもしれません。でも、5つの経費項目を積み上げていくと、その数字は現実的に到達できます。5つ全部把握している社長、実は意外と少ないんです。
5位・4位|固定資産税と管理費・修繕費
まず、知っている社長が多いのがこの2つです。固定資産税は不動産を持っていれば毎年かかる費用で、法人名義であれば当然全額経費になります。物件規模にもよりますが、年間10〜30万円ほどが目安です。
管理費や修繕費も同様です。管理会社への委託費、設備の修理代、共用部の清掃費など、維持・管理にかかった費用はすべて経費として計上できます。小さな修繕の積み重ねで、年間20〜30万円規模になることもよくあります。
2つ合わせて年間30〜50万円。地味に見えますが、これが毎年続くのが法人不動産の基本の強みです。
3位|ローン利息
ここからが本番です。法人で融資を引いて物件を購入する場合、支払ったローンの「利息部分」が経費になります(元本部分は経費になりませんので、この点は押さえておいてください)。
たとえば1億円を金利1.5%で借りた場合、初年度の利息はおよそ150万円になります。これが丸ごと経費として計上できます。
個人の場合、住宅ローン控除という制度はありますが、事業用途でない限り利息の経費化は難しい。法人の方が断然使いやすい仕組みです。収益が出ている物件であれば、賃料収入を得ながら利息を経費化できる。これが法人不動産の醍醐味のひとつです。
2位|取得時の諸費用
不動産を購入する際には、物件価格以外にもさまざまな費用がかかります。不動産取得税、登記費用(登録免許税・司法書士報酬)、印紙税、ローン事務手数料など。
これらは初年度限定の費用ですが、1億円規模の物件であれば合計で50〜100万円になることも珍しくありません。個人で購入すると取得費として扱われ、売却時にしか使えないケースもありますが、法人では取得年の経費として計上できる場合があります。
「買ったときにしかかからない費用だから」と見落としがちですが、初年度の税負担に大きく影響します。購入前に税理士と一緒に確認しておくと安心です。
1位|減価償却費
5つの経費の中で、最大の武器がこれです。
建物は時間とともに価値が下がるとされているため、税務上は一定の期間に分けて経費化できます。これが減価償却です。RC造(鉄筋コンクリート造)の建物であれば耐用年数は47年。1億円の建物なら、毎年約150万円が自動的に経費として計上されていきます。
「自動的に」というのがポイントです。特別な申請をしなくても、保有しているだけで経費化が進むわけです。木造や軽量鉄骨造であれば耐用年数が短くなる分、初期に大きく経費化できる場合もあります。築年数や構造によって戦略が変わるため、購入前に税理士と試算しておくことをおすすめします。
350万円の節税効果はいくら?
5位から1位を合計すると、初年度は350万円以上の経費が積み上がる計算になります。では実際にどれくらい税金が減るのか。
法人の実効税率は規模にもよりますが、中小企業でおおむね約34%程度です。350万円 × 34% ≒ 約119万円。つまり初年度だけで、およそ120万円の節税効果が期待できることになります。
もちろん、物件の収益状況や他の経費との兼ね合いもあります。ただ「不動産を買っただけでこれだけ経費が立つ」という事実を知っているか知らないかで、経営判断の質が変わります。
最後に
法人での不動産購入は、節税効果だけでなく、資産形成・退職金原資づくりとしても機能する、使いこなすほど強い手段です。「今期の利益が多い」「手元のキャッシュをどう使うか迷っている」という社長こそ、一度、法人での不動産取得を税理士に相談してみる価値があります。
5つの経費を全部使いこなせれば、初年度から大きな差が出ます。まだ検討したことがないなら、今期の決算前に動いておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。