先日、不動産会社から物件を購入したばかりの社長から、こんな連絡が来ました。
「決済が終わって一息ついたところで、税理士から『取得税と登録免許税の処理、どうしますか?』って聞かれたんですが、正直よくわかっていなくて……」
こういったケース、実は珍しくありません。不動産を買うときはどうしても物件価格や融資条件に目が行きがちで、付随して発生するこれらの税金をどう処理するか、後回しになってしまうんですよね。でも、この処理方法の違いが、数百万円単位の節税効果を左右することがあります。
1億円の物件なら「税金だけで500万円超」になることも
不動産を取得したときには、大きく2つの税金が発生します。ひとつが不動産取得税、もうひとつが登録免許税です。
不動産取得税は、物件価格のおおむね3〜4%が目安です。登録免許税は所有権移転登記などに伴って発生し、こちらはおおむね2%程度。つまり合計で物件価格の5〜6%ほどになるわけです。
1億円の物件を買えば、それだけで500万円以上の税負担が生じる計算になります。決して小さくない金額ですよね。だからこそ、この処理方法が重要になってきます。
法人と個人、どちらが有利なのか
結論からお伝えすると、法人で不動産を取得した場合、不動産取得税と登録免許税はどちらも「費用(損金)」として計上できます。つまり、その年の法人税を減らす経費にできるということです。
法人税率が約30%だとすれば、500万円の取得関連税を損金にすることで、単純計算で150万円ほどの法人税を減らせる可能性があります。払った税金が、さらに別の税金を減らすための武器になる——これが法人で不動産を持つ大きなメリットのひとつです。
一方、個人で不動産を購入した場合はどうなるかというと、これらの税金は「取得原価」に組み込まれます。つまり、建物や土地の購入コストの一部として計上され、実際に節税効果が出るのはその不動産を売却するときまで待つことになります。
不動産を長期保有するつもりなら、その節税効果は何十年も先の話です。法人と個人のこの差は、思っている以上に大きいと感じています。
なぜ「損金算入」と「取得原価算入」でこんなに違うのか
少し丁寧に整理しておきましょう。
損金算入というのは、簡単に言えば「その年の経費にできる」ということです。購入した年度の課税所得を直接減らすことができます。
一方、取得原価に算入するというのは、不動産という資産の価格の一部になるということ。土地であれば売るまで経費にならず、建物であれば減価償却を通じて少しずつしか経費化されません。
「同じお金を払っているのに、なぜ扱いが違うの?」と思われるかもしれません。これは税法上の取り扱いの違いで、法人税法と所得税法でルールが異なるためです。個人の場合は不動産所得や譲渡所得の計算ルールに縛られるので、取得時の節税が難しくなるわけです。
注意したいポイントが3つあります
「それなら法人で買えば全部OKじゃないか!」と思いたいところですが、いくつか押さえておきたい点があります。
まず、物件の用途や種別によって、税率や軽減措置が異なります。住宅用・非住宅用、土地・建物、新築・中古——これらの組み合わせによって、不動産取得税の税率や計算の特例が変わります。
次に、取得税の損金算入のタイミングも確認が必要です。不動産取得税は取得後しばらく経ってから納税通知が届くケースが多く、「いつの期に計上するか」が論点になることがあります。
そして、そもそも法人で購入することが最適かどうか自体も、個別の状況によります。法人の資金繰り、融資の組み方、将来の相続対策など、トータルで考えないと「節税したつもりが、別のところで損していた」ということにもなりかねません。
購入前に一度、立ち止まってください
不動産の取引は、契約が終わってしまうと後から変えられないことがほとんどです。「法人名義にする」「個人名義にする」という判断も、決済が終わった後では遅い。
取得税や登録免許税の処理方法ひとつとっても、法人か個人かで扱いがまったく異なります。そして、その差が数百万円規模になることは珍しくありません。
不動産の購入を検討している、あるいは近々決済を予定しているという社長がいれば、ぜひ契約の前に、税理士と一度シミュレーションしておくことをおすすめします。「どうせ変わらないだろう」と思っていた処理方法が、実は大きな節税チャンスだったというケースは本当に多いので。
少し面倒でも、購入前の一手間が後々の大きな差になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。