先日、不動産を3棟保有する社長からこんな質問を受けました。「管理委託費と修繕費は経費にしているのですが、ほかに何かありますか?」という内容です。
話を詳しく聞くと、毎月のように物件を視察しているのに交通費は個人負担、管理会社との打ち合わせでカフェを使っても経費扱いにしていない、不動産セミナーへの参加費も「これって経費になるの?」と思って請求していなかったといいます。
正直に言うと、この手の話は珍しくありません。不動産オーナーの社長でも、経費として計上できる範囲を狭く見積もってしまっているケースが非常に多いのです。
法人の不動産管理費、実は思った以上に広い
結論からいえば、法人が不動産を保有・運営している場合、「管理に関わる支出」はかなり幅広く経費化できます。
管理委託費や修繕費はもちろん経費です。ただし、それだけではありません。物件の視察にかかった交通費・宿泊費、管理会社の担当者との打ち合わせで使った飲食費、不動産投資に関連した研修・セミナーの参加費、さらには専門書の購入費まで、「法人の業務に紐づいている」と合理的に説明できる支出はほぼ経費として計上できます。
個人の場合はこの線引きが難しいのですが、法人だと「法人としての事業活動」という文脈があるため、より広い範囲が認められやすいのが実態です。
年600万円を計上すると、税額はどう変わるか
具体的な数字で考えてみましょう。
管理委託費・修繕費・交通費・打ち合わせ費・研修費などをすべて合算して、年間600万円を経費計上できたとします。法人の課税所得が800万円を超えているケースでは、実効税率はおおむね33%前後です。
600万円 × 33% ≒ 200万円。この計算式が示しているのは、「経費として計上できる支出を見落とすと、毎年200万円を余分に国へ払い続けることになる」ということです。10年続ければ2,000万円の差になります。
法律上きちんと認められている節税手法なので、使わない理由がないとも言えます。
見落とされやすい経費、具体的にはこんなもの
日常の業務の中で見落とされやすい支出を挙げると、こうなります。
- 物件への移動にかかったガソリン代・高速道路代・電車・新幹線代
- 管理会社の担当者との打ち合わせで使ったカフェ・飲食費
- 不動産投資や賃貸経営に関するセミナー・勉強会の参加費
- 関連する専門書・雑誌の購入費
- 物件の状態確認のために購入したカメラ・測定機器など
「言われてみれば確かに業務だ」と気づくものばかりですが、日常的に発生するため領収書を取り忘れていたり、個人のカードで支払ってしまったりすることがほとんどです。特に「物件視察の交通費」は、法人の不動産事業として行っているにもかかわらず個人負担にしてしまっているケースが多く、もったいないと感じる瞬間の一つです。
実務でやっておきたいこと
対策はシンプルです。「不動産管理に関わる支出を、一か所に集約して記録する」こと。これに尽きます。
具体的には、不動産管理専用の法人カードを一枚用意して、管理に関係する支出はすべてそのカードで払うようにするのが一番楽です。カード明細が自動でログになりますし、税理士との打ち合わせのときに「これはどういう目的でしたか?」と確認する手間も減ります。
カードが難しければ、Googleスプレッドシートやクラウド会計ソフトで「不動産管理費」のシートを作り、支出のたびに「何のために使ったか」をメモするだけでも大きく変わります。大切なのは、後から「これは経費になりますか?」と聞くのではなく、支出した段階で目的を記録しておくことです。税務調査が入ったときも、この記録が根拠になります。
経費の範囲は税理士と確認を
ここまで書いた内容はあくまで一般論です。実際にどこまで経費として認められるかは、法人の業種・規模・不動産との事業上の関連性によって変わります。
たとえば、本業と不動産の関係が薄い場合は、一部の支出が「業務上の必要性がない」と判断されるリスクもあります。「広く経費化したい」と思ったら、方針を決める前に顧問税理士に相談するのが安全です。
不動産管理費の経費化は、すでにやっている会社にとっては「当たり前のこと」として処理されています。まだ整理できていない場合は、今期の決算前に一度支出を棚卸しするだけで、思っていたより多くの金額が経費として計上できることに気づくはずです。まずは過去3ヶ月の支出を振り返ることから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。