先日、不動産賃貸業を営む社長からこんな相談を受けました。

「消費税還付って2020年に完全に終わったんですよね? 税理士にそう言われて、もう諦めてるんですけど……」

結論から言うと、半分正解で、半分は思い込みです。確かに居住用賃貸建物への消費税還付は、2020年の税制改正でほぼ封じられました。でも「賃貸=すべてアウト」と思い込んでいる社長は、まだ使えるチャンスを自ら捨てているかもしれません。

2020年改正で何が変わったのか

改正前は、消費税の課税事業者になったうえで賃貸マンションを購入すれば、建物取得にかかった消費税(数百万〜1,000万円超)を還付してもらえる手法が広く使われていました。税務署にとっても看過できないボリュームだったため、2020年の改正で「居住用賃貸建物」については仕入税額控除(還付の根拠となる計算)が原則として認められなくなりました。

ここで多くの社長が「終わった」と判断して思考を止めてしまいます。でも、改正の対象はあくまで「居住用」です。

今でも狙えるのはどんな物件か

知っている社長が今注目しているのは、テナントビル・事務所ビル・倉庫・駐車場など、消費税がかかる賃料収入(課税売上)が発生する用途の物件です。

居住用の家賃収入は消費税が非課税ですが、事務所や倉庫の賃料には消費税がかかります。この「課税売上が立つ」という点が、スキームの成否を分ける大きな分岐点です。

課税売上が発生する物件であれば、建物取得時に支払った消費税を仕入税額控除として計上し、還付を受けるルートが依然として残っています。1,000万円を超える還付実績がある案件も、実際に存在します。

設計で最も重要な「3年間の課税売上比率」

ただし、ここが肝心なのですが、還付を受けるためには取得前から緻密な設計が必要です。

特に重要なのが、物件取得前の3年間における課税売上比率です。消費税の計算では、課税売上が全体の売上に占める割合(課税売上割合)が低いと、控除できる消費税額が減ってしまいます。つまり、物件を買う前の3年間、法人の売上構成がどうなっているかが還付額を大きく左右します。

ここで多くの場合、管理法人スキームとの組み合わせが有効になってきます。不動産管理法人を使って課税売上の比率を適切に設計しておくことで、合法的に還付の条件を整えるというアプローチです。

法人格を分けることで売上の性質をコントロールしやすくなるため、この手法は今でも現役です。ただし、法人設立のタイミングや事業実態の有無、物件の用途区分など、複数の要素が絡み合うため、設計を誤ると税務調査での追徴課税リスクが高まります。「何となく法人を作れば還付が取れる」という話では、まったくありません。

チェックしておきたい3つのポイント

スキームを検討する際に押さえておきたいのは、以下の3点です。

  • 物件の用途:居住用は原則NG。課税売上が発生するテナント・倉庫・事務所等が対象
  • 取得前3年間の課税売上比率:ここが設計の核心。事前に法人の売上構成を整えておく必要がある
  • 専門家との連携:税務署への届出タイミング、事業実態の構築など、手続きの順番を間違えると還付が否認される

この3点はどれひとつ欠けても機能しません。特に「取得後に専門家に相談した」というケースで失敗している社長を、私はこれまで何人も見てきました。

動く前に一度、立ち止まって考えてほしいこと

消費税還付は、正しく設計すれば今でも合法的に活用できる節税手法です。居住用はNG、でも課税用途の物件はまだ話が別——この認識の差が、社長の手取りに数百万〜1,000万円単位の差をもたらすことがあります。

一方で、スキームを正当化するための「形だけの事業実態」は税務署に見抜かれます。実態を伴った法人運営と、適切な届出・タイミング管理が大前提です。

もし今後、テナントビルや倉庫物件の取得を検討しているなら、契約の前——できれば1〜2年前から——節税に強い税理士に相談することを強くおすすめします。動いてからでは間に合わないケースが多いのが、この分野の特徴です。

「終わった」と思って諦めていたなら、もう一度専門家の目で自分の状況を棚卸ししてみてください。まだ使える余地が残っているかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。